ロッテの救世主になれるか? 藤原、高部に次ぐチームを救う若き逸材たちの現在地

ロッテ・藤原恭大【写真:荒川祐史】

期待の若手が1番から5番のうちの大半に座っていた、ロッテの2軍オーダー

現在、優勝争いを繰り広げているロッテ。好調の1軍のみならず、2軍においてもファンにとって楽しみな要素が存在したことをご存じだろうか。9月上旬から、1番に藤原恭大、2番に平沢大河、4番・山口航輝という打順が固定され、若き逸材が揃って上位打線に並んでいたのである。また、大卒ルーキーの高部瑛斗も3番や5番といったクリーンアップの一角を務め、打率.368(10月7日終了時点)という好成績を記録していた。

1軍で新型コロナウイルスの感染が拡大した影響で野手が大きく不足したこともあり、ファームのチーム編成が困難なため、残念ながら、10月11日までのロッテのイースタン・リーグ公式戦の中止が発表された。ロマンあふれる2軍の上位打線が見られなくなるのは、ファンとしては残念な面もあるが、このタイミングで1軍に昇格した藤原と高部が、1軍でどんなパフォーマンスを見せてくれるか、という見どころも同時に生まれている。

今回は、先ほど名前を挙げた4名の若手たちが、今季の2軍でどのような活躍を見せてきたのかを、あらためて見ていきたい。先日1軍に昇格した2人だけではなく、近未来のチームを担うことが期待される山口と、苦闘が続く中で持ち味を失っていない平沢の現状についても、個別に紹介していこう。

藤原恭大の直近2シーズンの二軍での成績(10月7日時点)

現在、1軍で1番として起用される藤原は2軍で高い盗塁成功率をマーク

藤原は積極的にスタメン起用された昨季に引き続き、今季も主に一番打者として出場を重ねていた。打率の部分だけ見ると昨季と大差のない成績にも感じるが、各種の数字をつぶさに見ていくと、その打撃内容の確かな進化が表れていることがわかる。

最も顕著なのが、打数が減っているにもかかわらず2倍近くまで増加した本塁打数だろう。また、上位を打つにあたって重要な要素でもある出塁率に関しても.300に満たなかった昨季から、今季は.046も上昇させている。そして、出塁率そのものも.332と一定以上の水準に到達。こうした面からも、リードオフマンとしての適正を着実に伸ばしている。

また、昨季の盗塁成功率が.842、今季の盗塁成功率が.824と2年続けて高い水準にある。その盗塁技術の高さは、持ち前の脚力を活かすためにも大きな要素となるだろう。また、数字に表れない場面でも貪欲に先の塁を狙う姿勢を見せるシーンもたびたび見られ、そのスピードは、機動力を活かすという現在の1軍のチーム方針にも合致するものだ。

選球眼の向上に、本塁打数の増加も含めた長打力の上昇も合わさり、OPSも昨季から.100近く増加して.700台に到達。高卒2年目ということもあり、まだその打撃は発展途上ではあるものの、少しずつ完成度は高まっているとも言えるだろう。10月6日に今季初の1軍昇格を果たし、シーズン初スタメンに抜擢された10月7日には今季初ヒットも放った“俊英”は、今後も1軍の舞台で確かな存在感を放ち続けられるだろうか。

山口航輝の直近2シーズンの2軍での成績(10月7日時点)

藤原と同じく高卒1年目から2軍で多く出場した山口

山口も藤原と同じく、高卒1年目だった2019年から多くの出場機会を得ていた。そして、2020年にはより優れた打撃内容を見せ、成長の跡を感じさせているのも同様だ。山口は打率.260、出塁率.321と一定以上の数字を残し、わずか59試合で昨季の数字を上回る7本塁打を記録。OPSも昨季に比べて.119も向上しており、先述の通り4番にも定着。打線の中軸として、随所で光る活躍を見せている。

高卒2年目で2軍の4番を任されたといえば、2019年にイースタン・リーグで本塁打王と打点王の2冠に輝き、現在は1軍でも4番として奮闘している安田尚憲を思い出すファンも少なくはないだろう。その安田が昨季残した成績と、今季の山口の成績の比較は、下記の通りとなっている。

安田尚憲と山口航輝の2軍での成績(10月7日時点)

打率に関しては山口のほうが上回っているが、本塁打、打点、出塁率、OPSといった要素では、安田が一枚上手だった。このあたりは高校時代から将来を嘱望された安田の豊かな才能を感じさせるところだが、同じく高卒2年目で及第点以上の数字を残している山口も、若くして4番に座り続けるだけの理由を示しているのではないだろうか。

ロッテの外野手陣の年齢層に目を向けると、26歳以下のは藤原(20歳)、山口(20歳)、和田康士朗(21歳)、高部(22歳)の4名だけと、全体的に高齢化が進んでいる傾向にある。それだけに、優れた打撃センスを有する山口が台頭すれば、チームの中長期的な展望も明るくなってくることだろう。藤原と共に将来のロッテの外野を担うことが期待される逸材は、着実に成長のステップを踏み続けている。

高部瑛斗の今シーズンの2軍成績(10月7日時点)

高部はルーキーイヤーの今季、2月に負った骨折の影響で出遅れた。開幕は延期されたものの、練習試合でアピールを見せたタイミングでの故障は響き、結果的に開幕1軍入りも逃してしまう。それでも、2軍では持てる実力をしっかりと発揮し、プロの舞台でも出色の打撃を披露。10月7日の時点で.368というハイアベレージを記録しており、プロ1年目にして早くも2軍では格の違いを見せつけている。

また、2軍での盗塁成功率は.813と高水準で、藤原と同じく高い確率で塁を盗める俊足と盗塁技術も、高部の大きな武器の一つ。守備面においてもその脚力は活きるが、それに加えてアマチュア時代から高く評価されていた強肩も持ち合わせている。先述した外野手の全体的な高齢化もあり、走攻守三拍子が揃った選手に成長する可能性を秘めた高部が、即戦力として期待を受けていたのも頷けるところだ。

しかし、開幕から驚異的な俊足を武器にブレイクを果たした和田、2軍での打撃好調をしっかりと1軍での活躍につなげてみせた加藤翔平といった、同じく俊足・強肩を武器とする外野手が揃って躍動したことに加え、菅野剛士、角中勝也、清田育宏といった、中堅・ベテラン勢も随所で存在感を発揮。その影響もあって、高部は2軍で好調な打撃を見せながらも、なかなか1軍昇格の声がかからない状況が続いていた。

ただ、先述したチーム事情で一転して外野手不足に陥ったこともあり、藤原ともども急遽1軍に昇格。昇格即1番のスタメンに抜擢された10月6日のオリックス戦では、山本由伸投手、ブランドン・ディクソン投手という一線級の投手に抑え込まれ、4打数無安打、3三振と1軍の洗礼を浴びた。この結果に臆することなく、2軍で見せてきた優れた打撃内容を、ぜひ1軍の舞台でも発揮してほしいところだ。

平沢大河の直近2シーズンの2軍での成績(10月7日時点)

昨季は1軍で112試合に出場した平沢だが…

2軍戦で確かな存在感を発揮していた先述の3人とは異なり、平沢は上位打線で継続的に起用されているものの、長きにわたって打撃不振に苦しみ続けている状況だ。打率、OPSをはじめ、各種の打撃成績においても苦悩の跡がうかがえる数字が並んでいるが、2年続けて打率.140台という点が、とりわけ深刻さを物語ってもいるだろう。

2018年には主に外野手として1軍で112試合に出場していたが、このシーズンでは打率.213に対して出塁率が.328と、往々にして制球の良い1軍の投手からも冷静に四球を選べる、優れた選球眼が最大の武器となっていた。その選球眼が現在も健在であることは、2019年以降の2軍での出塁率が2年続けて打率よりも.100以上高くなっていることからもうかがえる。

打撃不振の中でもひとつの持ち味は失っていないだけに、ボール球を見極めて打者有利のカウントを整えた際に、相手投手がストライクゾーンに置きに来た球に対して、強くコンタクトできるかが不振脱出のカギとなるかもしれない。そういった点では、昨季までは同様の課題を抱えていた菅野の活躍が、ある種のヒントとなるかもしれない。

菅野も元々優れた選球眼を有していたものの、1軍に上がると結果を残せない状況が続いていた。そのため、今季開幕前のキャンプにて、強いストレートを1球で捉えるための取り組みを行った。その結果、今季の菅野は、打者有利のカウントで投手がストライクを取りに来る球をきっちりと捉えられるようになり、1軍の舞台でも着実に成績を残している。平沢も課題を克服するきっかけをつかみ、悩める日々からの脱却を果たしてほしいところだ。

福田光輝の今シーズンの二軍成績(10月7日時点)

高部と同じく大卒ルーキーの福田光も、中軸を打つ機会は多い

今回紹介した4人の他にも、中軸として起用されることの多い若手はいる。高部が5番に定着していた時期に3番を打つことも少なくなかった福田光輝は、10月に入ってからは高部が3番に座るようになると、入れ替わるように5番へ。このように、クリーンアップを務めることも多い福田光の2軍での成績は、下記の通りとなっている。

福田光はプロ1年目ながら開幕1軍に抜擢されて出場機会も得ていたが、11試合で打率.100と結果を残せず。7月4日の試合を最後に、2軍での再調整が続いていた。ここでも高部のように大活躍というわけにはいかず、プロの水に慣れるのにやや苦労している面も。それでも、感染症の拡大に伴う内野手の不足もあって、10月6日に再び1軍へ昇格。豪快なスイングは大きな魅力なだけに、確実性を高めてチャンスを活かしたいところだ。

期待の若手が2軍の上位打線に並んでいるというだけでも、ファンにとってはチームの今後が楽しみになるというもの。それに加えて、藤原と山口がそれぞれの得意分野を活かしながら着実な成長を感じさせ、高部も今後が期待できるような打撃を見せている。20代前半の選手たちが活躍しているという事実は、チームの将来を占ううえでも、大いにポジティブな要素といえよう。

今季は投打の噛み合った戦いぶりを見せているマリーンズだが、チームの年齢層を考えても、いずれ世代交代の時は訪れることだろう。悩める大器の平沢も含め、浦和で研鑽を積んだ若き逸材たちが、近い将来、幕張の地でチームの屋台骨を担う存在となってくれることに、今から期待したいところだ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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