MotoGP第10戦:スタート直前の雨が変えた路面。ペトルッチが2020年初優勝し、ホンダのマルケス弟が2位獲得

 MotoGP第10戦フランスGPの決勝レースがフランスのル・マン-ブガッティ・サーキットで行われ、MotoGPクラスはダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ・チーム)が2020年シーズン初優勝を飾った。2位にはアレックス・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が入り、最高峰クラス初表彰台。ホンダに今季初の表彰台をもたらした。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は7位でレースを終えている。

 MotoGPクラスの決勝レースでは、ウオームアップラップの直前に雨が落ち始め、スタートディレイ。ライダーたちはドライコンディション用のスリックタイヤを履いていたが、スタート直前の雨によってピットに戻り、急きょレインタイヤに履き替えた。

 周回数は当初予定されていた27周から26周に減算。レースはウエットレースが宣言され、これによりレース中にコンディションがドライに回復した場合など、ピットインをしてバイクの乗り換えが可能となった。2度目のサイティングラップではすでに路面はフルウエットに変化したようで、ライダーたちは水しぶきを上げながら周回してグリッドについた。

 気温は13度、路面温度は14度。低い気温とウエットの路面コンディションでレースは始まった。好スタートを切ったのは2番グリッドのジャック・ミラー(プラマック・レーシング)。一方、その後方ではバレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が3コーナーでスリップダウンを喫する。

 イン側に滑っていくロッシとロッシのマシンを避けようと、マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)やジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)、アレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)がコースアウト。ロッシはここでリタイア、3人のライダーはポジションを落とす結果になった。

 トップを走行していたミラーだったが、オープニングラップの最終セクターでダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ・チーム)がオーバーテイク。ペトルッチがトップ、さらにアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)が2番手に浮上し、ミラーは3番手に後退する。

 ポールポジションスタートのファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)はポジションを落とし、2周目にはポル・エスパルガロ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)にも交わされて5番手に後退。さらに後方にはアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)が迫る。

 リンスは3周目にクアルタラロを交わし、5番手に浮上。クアルタラロはさらに、カル・クラッチロー(LCRホンダ・カストロール)にも接近を許し4周目には交わされる苦しい展開。このあともクアルタラロのペースはまったく上がらず、さらにポジションを落としていくことになる。

 上位のペトルッチ、ドヴィツィオーゾ、ミラーのドゥカティ勢3人は、ほぼワンパックとなって4番手以下に約2秒のアドバンテージを築く。4番手にはリンスが浮上。5番手にエスパルガロ弟がつける。

 ドゥカティ勢の3人は変わらずに表彰台圏内をキープしていたが、その後方からリンスがファステストラップを叩き出しながら迫っていた。一時は2秒ほどあった3ばんてのミラーとリンスの差は、9周目には1.5秒を切るまでになる。

 リンスは11周目に再びファステストラップをマーク。3番手のミラーとの差は1秒を切り、13周目にはついにミラーにテール・トゥ・ノーズで迫る。15周目、リンスが3コーナーでミラーをとらえた。しかしミラーが再びリンスをオーバーテイク。3番手を奪還する。

 トップグループはペトルッチ、ドヴィツィオーゾ、ミラー、そしてリンスを加えた4人となった。そのトップグループには、5番手のエスパルガロ弟が少しずつ差を縮めながら迫る。さらにその約0.5秒後方には、アレックス・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が接近。マルケス弟は15周目にはファステストラップをマーク。エスパルガロ弟との差を縮め、17周目にはエスパルガロ弟の背に迫るまでになった。

■波乱のレースで2位表彰台を獲得したアレックス・マルケス

 3番手争いは引き続き、ミラーとリンスにより展開されていた。さらに、ペトルッチとドヴィツィオーゾが激しいトップ争いを展開。18周目、ドヴィツィオーゾがペトルッチとトップを争いながら4コーナーに突入。そのふたりに両側のアウトから、ミラーとリンスが仕掛け、4人が並ぶ形でコーナーに進入。もつれたポジション争いのなか、ドヴィツィオーゾが4番手に後退する。

 しかし残り8周、3番手を走っていたミラーのマシンにマシントラブルが発生。ミラーはリタイアとなる。さらにその翌周、3番手走行中だったリンスが3コーナーで転倒。リンスはレースに復帰したが、最後尾までにポジションを落とした。

 立て続けに起こった上位ライダーのアクシデントのあと、残り6周でペトルッチがトップをキープ。ドヴィツィオーゾがその2秒後方に2番手で続き、さらに3番手には、エスパルガロ弟を交わしていたマルケス弟が浮上していた。ドヴィツィオーゾとマルケス弟との差は約0.2秒。その差はほとんどない。さらにマルケス弟の後方には、エスパルガロ弟、ミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMテック3)が連なって続く。

 残り3周、3番手を走行していたマルケス弟がドヴィツィオーゾを交わして2番手に浮上。ドヴィツィオーゾはその翌周にはエスパルガロ弟にも交わされ、4番手にポジションを落とす。

 波乱のレースを制したのは、ペトルッチ。ペトルッチは終盤、リードを守って2020年シーズン初優勝を飾った。2位でフィニッシュしたのはマルケス弟で、MotoGPクラスでの初表彰台獲得となるとともに、ホンダにとっても2020年シーズン初の表彰台だった。

 3位はエスパルガロ弟。今季3度目の表彰台となった。終盤にポジションを落としたドヴィツィオーゾは4位。そして、5位には最後にポジションを上げたヨハン・ザルコ(エスポンソラーマ・レーシング)が入った。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は10番手付近から、最終的には7位でレースを終えている。

 チャンピオンシップのランキングトップのクアルタラロは、序盤にポジションを落としたあと、9位でフィニッシュ。チャンピオンシップで2番手だったミルは11番手、3番手だったビニャーレスは10番手とチャンピオンシップ上位のライダーが軒並み下位に沈んだ。レーススタート直前に落ちた雨は大きな波乱のレースをもたらした。

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