“部長”の93%は男性、女性管理職が増えないのは「なりたい人が少ないから」なのか?

2020年に女性管理職を30%にするという政府目標は、未達のまま期限を先延ばしすることになりました。

今年は世界中がコロナ禍に苦しんでいます。しかし、新型コロナウイルスが蔓延していなかったとしても、目標達成は非現実的と言わざるを得ない状況でした。

なぜ、女性の管理職が増えないのか?そもそも女性は管理職になりたがる人が少ない、という話を耳にすることがあります。また女性に限らず、そもそも誰もが管理職を目指している訳ではありません。しかし、もし“管理職になりたい人が少ない”という理由だけで女性管理職が増えないのだとしたら、原因は女性のマインドにあることになります。

ところが世の中を見渡すと、日本にもたくさんの女性リーダーがいます。橋本聖子大臣や小池百合子東京都知事だけでなく、身近にも何人もの女性リーダーの顔が思い浮かぶはずです。それらの方々は、管理職を希望する珍しい女性たちの事例にすぎないのでしょうか。


男女の雇用者数を比較すると…

総務省「労働力調査」の詳細集計2020年4~6月のデータを見ると、男性の雇用者数3246万人に対し女性は2667万人。男性の方が600万人近く多くなっています。

しかし、雇用者数を比率にすると、男性54.9%に対して女性は45.1%。単純にこの比率のまま雇用先企業で昇進した場合、女性の管理職比率は45.1%になるはずです。

ところが、現実は程遠い数字となっています。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2019年の課長級管理職の比率は、男性88.6%に対し女性11.4%。部長級に至っては、男性93.1%に対して女性はわずか6.9%です。

同調査をもとにまとめられた、内閣府の男女共同参画白書の図を見ると、1989年からの推移が確認できます。

このグラフを見ると、少なくとも20年、着実に右肩上がりになっていることがわかります。しかし、これだけ右肩上がりを続けてきてようやく今の数字です。女性は係長級でも18.9%にとどまります。

男女別の雇用形態比率に現れる差

管理職の女性比率が圧倒的に低くなっている背景を理解する上で、もう一つ押さえておかなければならないデータがあります。正規・非正規と呼ばれる雇用形態別の男女比率です。

労働力調査の詳細集計によると、2020年4~6月の役員を除く雇用者全体に占める割合は、正規63.5%に対し非正規36.5%です。それに対し、男性と女性それぞれの正規・非正規比率は以下の通りです。過去からの推移がわかるように、4~6月のデータを過去10年分並べてグラフにしました。

過去10年、男性の正規比率がほぼ8割であるのに対し、女性は5割に届いていません。圧倒的に男性の正規比率の方が高い数値の状態が続いています。

正規雇用の女性比率は男性の半分

今度は、労働力調査詳細集計をもとに正規雇用に占める男女比率を算出してみます。先ほどと同じく、4~6月のデータを過去10年分並べました。

じんわりと女性比率が上がってはいるものの、ほぼ横ばいで1/3程度にとどまっていることがわかります。

ほとんどの場合、企業内で管理職に昇進するのは正規雇用の人です。今の一般的な昇進システムを前提にすると、正規雇用の女性比率が低ければ、その時点で管理職に占める女性比率も低くなることがほぼ確定してしまいます。

ただ、政府が掲げていた女性管理職比率の目標は30%です。正規雇用の比率をそのままスライドさせたのであれば、達成可能な目標のように見えます。しかし実態は、30%から大きく乖離しています。

女性が評価されづらいシステム

その理由は、やはり女性が管理職をやりたがらないからなのでしょうか。私が所属するしゅふJOB総研で、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦”層に「あなたは管理職になることを希望していますか?」とアンケート調査を行ったことがあります。

調査では、「希望しない」という回答が最も多く44.9%を占め、「希望する」と回答した人は2.7%にとどまりました。しかしながら、「条件によっては希望する」と回答した人が33.2%いたのです。

およそ1/3の人が条件次第で管理職を希望しているということです。女性管理職が増えない背景には、希望する人が逡巡せざるを得ない何らかの課題、社会システムまたは構造上のひずみがあるのではないかと考えます。

では、女性が管理職を希望する際に必要となる条件とは何でしょうか?働く主婦層の場合、家庭から受ける制約を前提としています。それだけに、時間の融通が利く働き方が、周囲から後ろ髪引かれることなく公然と認められることは重要な条件になります。

時短正社員や短日数正社員などのような働き方がもっとポピュラーになり、それに見合った業務設計や評価制度、社内風土、雰囲気などが形成されることが望まれます。

それともう一つ。そもそもなぜ女性は家庭からの制約を受けながら働かなければならないのでしょうか。家事や育児は妻だけが行うものではなく、家族全員の務めです。

時代の流れは男女共働き世帯の比率を高める方向に進んでおり、収入の獲得においても女性の役割が増してきています。また、キャリア志向を高めている女性が増えていることにも着目する必要があります。

もちろん、性別を問わず、管理職になりたくない人もたくさんいます。専業主婦として家事育児に専念したいという女性もいるはずです。それは男性も同じで、専業主夫になることを望む人もいます。時代の変化とともに、多様化する価値観はそれぞれ尊重されてしかるべきです。

大切なのは、社会全体がそれらの変化を受け入れながら進化することです。それは、社会システムを未来形へと発展させていくための必須条件なのだと思います。

© 株式会社マネーフォワード