【大学野球】「血の法明戦」で13K初完封 「明治の11番」託されたドラ1候補・入江大生の覚悟

明大・入江大生【写真:荒川祐史】

4年秋に初完投&初完封、明大OBの活躍刺激「森下さん、伊勢さんに負けてられないと」

東京六大学秋季リーグ戦は11日、明大のドラフト1位候補右腕・入江大生(4年)が法大戦で13三振を奪い、リーグ戦初完投を初完封で飾った。作新学院(栃木)時代は打者として甲子園Vを経験した逸材。26日に行われる運命のドラフト会議を前に投手として非凡なポテンシャルを見せた。

「血の法明戦」で明治の11番がマウンドに仁王立ちした。この日の127球目、最後の打者を遊ゴロに斬って取ると、入江の顔に笑みがこぼれた。7安打を打たれながら、奪った三振は13。4年秋にして成し遂げたリーグ戦初完投は初完封という最高の形で飾った。

「素直にうれしいです。昨日は(明大の先輩)森下さん(広島)、伊勢さん(DeNA)が勝っていたので、負けてられないなと思いました」

今秋先発した2試合は、9月19日の早大戦が5回6失点、同26日の立大戦は6回3失点。立大戦は勝ち投手になったものの、求める投球じゃなかった。「気持ちが入りすぎて球が上ずっていたので、今日は力を抜こう、抜こうと」。変えた意識で、投球も変えた。

背中にある「11」に強い想いを持つ。16年夏の甲子園で優勝した作新学院時代は今井達也(現西武)がエースに君臨。入江は打撃センスを買われ、4番打者として本塁打を放つなど貢献したが、希望していた投手としては2番手扱いだった。

しかし、当時コーチとして入江の姿を見た田中武宏監督には、マウンドの上で大成する未来を感じていた。それほど惚れ込んだ逸材だったから、勧誘した際に思いが一致した。

「『投手として』というのは、本人もこちらも同じ思いだった」

3年をかけてドラフト1位候補と呼ばれるまでに成長。そして、今年、川上憲伸、山崎福也、野村祐輔ら、偉大な先輩が背負ってきた伝統のエースナンバーを未完の大器に託し、その立ち振る舞いについて説いてきた。

「1つでも多く勝たせる投球ができれば、明治の11番に相応しくなる」

入江自身も春以降、「明治の11番として」という言葉を繰り返し、自覚を示した。

9月19日の早大戦で打ち込まれた際には「秋のシーズンがラストなので、どれだけ身体が壊れようと、体力が底を尽きようと、チームの勝利を優先して投げろと言われれば投げるし、抑えろと言われれば抑えたい」と言った。

翌日。3-3の同点の8回に連投救援し、抑えた際には「ここで点を取られたら『明治の11番』を返そうという、そのくらいのつもりで。1点もあげたくなかった」と言い、貪欲なまでに勝利にこだわってきた。その執念がライバルとの一戦で実を結んだ。

今朝の必勝祈願で「今日が天下の分け目だ。今日負ければ、明日はない」と指揮官から熱いゲキを飛ばされ、入江も「絶対に負けたくなかった」と投球で呼応。ドラフト候補としての意識も「監督に『バックネット裏と戦うな』と言われているので」と集中していた。

5試合の短期決戦で行われた春は0勝。初めてエースらしい投球で母校に勝利をたぐり寄せた。

「秋も中盤になってしまったけど、残り5試合でチームを1つでも多く勝たせるピッチングができれば、明治の11番に相応しくなるかなと思います」

投手として才能を開花させた「明治の11番」は、紫紺の血を沸騰させながら、優勝を睨んでいる。(神原英彰 / Hideaki Kanbara)

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