近代統計の祖

 今年は5年に1度の国勢調査の年だ。今回から県独自のキャラクター「杉さん」が登場し、白ひげ姿の「ゆるキャラ」が街頭に立ち、「回答を」と呼び掛けた▲国勢調査が始まって今年で100年。杉さんのモデルは、長崎生まれで「日本近代統計の祖」と呼ばれる杉亨二(こうじ)(1828~1917年)だ。杉は幼少時に両親を亡くし、苦学して洋学を修めた。明治新政府で統計の仕事に就き、現在の山梨県で人口や世帯構成などの大規模調査をした。これが国勢調査の源流だ▲5年前の国勢調査は回答を得られない「未回収率」が13%に上った。不在がちな世帯の増加やプライバシー意識の高まりが調査票の回収を難しくする▲国は今回、インターネット回答を推奨したが、回答率は伸び悩む。県によると、県内のネット回答率は当初締め切り予定だった7日時点で31.4%。全国に比べ6.2ポイント低かった▲高齢者が多く、パソコンやスマートフォンの保有率の低さが要因とみられる。菅義偉首相の掲げるデジタル化の課題が浮かぶ。国はネット、郵送とも回答期限を20日に延長した▲杉は晩年、失明しながらも娘に手を引かれて国勢調査の準備委員会に出席し続けた。人口や世帯の正確な統計が全ての政策の基礎になる。郷土が生んだ偉人の情熱と労苦を胸に刻みたい。(潤)

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