新羅仏を新発見 1000年超前の作か、対馬の市民持ち込み

統一新羅時代の渡来仏と鑑定された、対馬市の民家に伝わる仏像

 長崎県対馬市内の民家に、8~9世紀の統一新羅(しらぎ)時代に造られたとみられる渡来仏1体があることが11日、対馬の仏像に関する九州国立博物館(九博)の研究員を招いた市民向けフィールドワーク中に分かった。
 フィールドワークは対馬観光物産協会主催。同市厳原町の主婦(71)が、自宅から持ち込んだ仏像を九博研究員の大澤信さん(34)=専門・仏教彫刻史=に見せ判明した。大澤さんは鑑定後「よくぞ千年以上にわたり受け継がれてきた。大切になさってください」と語り掛け、主婦は「渡来仏と聞いてびっくりした。大事にしていきたい」と驚きの声を上げた。
 九博によると、対馬で発見された渡来仏は約130体あり、中国や朝鮮半島で5~17世紀に造られたとみられている。このうち朝鮮半島で統一政権が成立し、日本では奈良や平安初期に当たる時代に造られた新羅仏は約30体。今回の1体は過去の調査で存在が知られていなかった。
 新発見の新羅仏は総高7.8センチの銅造如来立像。高く盛り上がった頭部の肉髻(にっけい)や、両肩からU字を描くように表現された衣紋(えもん)などが統一新羅時代の特徴をよく表しているという。過去に火災に遭ったとみられる表面の荒れがあり、印相(いんそう)を示す手先は欠けている。
 所有者の主婦は「ほかの仏像と一緒に仏壇に祭られていたので、家の片付け前に専門家に聞こうと持って来た」と話した。
 大澤さんは「古くから朝鮮半島との交流があった対馬ならではの発見」とした上で、「対馬の渡来文物の総合調査は30年近く行われておらず、あらためてその必要性が分かった。渡来仏のような仏像が見つかった場合は、対馬市教委文化財課や九博に連絡してほしい」と呼び掛けている。


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