日本ボクシング界のエース、世界ボクシング協会(WBA)、国際ボクシング連盟(IBF)バンタム級統一チャンピオン井上尚弥(大橋)が、10月31日(日本時間11月1日)に米ネバダ州ラスベガスでWBA3位、IBF4位のジェーソン・モロニー(オーストラリア)と防衛戦を行う。
新型コロナウイルスの影響で、試合をするのは約1年ぶり。聖地に初登場するモンスター(怪物)がどのようなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。
井上は当初、4月に世界ボクシング機構(WBO)同級王者との3団体統一戦が予定されていたが延期となり、相手がモロニーに変わった。
しかし、燃える気持ちは変わらない。ファイトマネーが100万ドル(約1億500万円)という軽量級では破格の金額を提示されたことも発奮材料の一つだろう。
入場料収入のない無観客開催だが、ジムの大橋秀行会長は「いい試合をすればさらに(金額は)上がっていくはず」と見通しを語った。
100万ドルは井上の高評価の証明だ。まず実力が抜きん出ている。ジャブで距離を測り、狙い澄ましたように放つパンチには必殺の威力がある。
デビュー以来、負けなしの19連勝(16KO)。昨年11月、ノニト・ドネア(フィリピン)との一戦では序盤に苦しむ場面もあったが、中盤から立て直すなど、精神力の強さも光った。
キャリア豊富なドネアから終盤にはダウンを奪い、判定勝ちを収めた。底力は本物と言える。
挑戦者モロニーは楽な相手ではないかもしれない。
アマチュアでスタートとした後、2014年8月にプロ転向。双子の弟アンドルー・モロニーは、元WBAスーパーフライ級の王者でもある。
戦績が21勝(18KO)1敗でパワーも十分のようだ。井上も「スタミナがあり、テクニックも十分」と警戒している。
しかし、大方の予想は井上勝利に傾いている。新型コロナウイルスの影響の中、合宿、ジムワークなどでじっくり調整を進めた。
大橋会長も「フットワークの速さが目立ってきた。完璧に近い状態に仕上がっている」と自信をのぞかせる。
井上はゴングが待ち遠しいようだ。「無観客にはなるが、映像を見てくれる方に元気を与えたい。そういう試合をしたい」と語っている。
心身ともに不安材料は見当たらない。1年ぶりの世界戦。ファンの期待に応えるKOシーンが待たれる。(津江章二)