スーパー耐久:永井「上村くんの速さをみせるためにスポット参戦を決めました」

 10月11日、ピレリスーパー耐久シリーズ2020第2戦『SUGOスーパー耐久3時間レース』のGr-1決勝レースが行われた。FIA-GT3マシンによる戦いが繰り広げられるST-Xクラスはスポット参戦のPorsche Center Okazaki GT3R(永井宏明/上村優太)がクラス最後尾となる5番グリッドから優勝を遂げた。

 Porsche Center Okazaki GT3Rを走らせるのは、2017年にST-Xクラスチャンピオンを獲得し、2019年もGTワールドチャレンジ・アジアにARN Racingの名称で参戦していたPORSCHE CENTER OKAZAKIだ。

 10月10日に予定されていたGr-1の公式予選が強い降雨によりキャンセルとなり、前戦富士24時間レースの決勝結果をもとにスターティンググリッドが決定された。そのため、第2戦からスポット参戦のPorsche Center Okazaki GT3RはST-Xクラス最後尾となる5番手からスタートすることとなった。

 ウエットコンディションなか、第1スティントを担当した上村は1コーナーで3番手に浮上すると、第4コーナーでDENSO LEXUS RC F GT3の小高一斗をかわし、2番手にポジションアップ。勢いに乗った上村はレインボーコーナーでトップのHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3に仕掛けたが、馬の背コーナーに差し掛かると総合14番手までポジションを下げてしまう。

「レインボーコーナーでトップのHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3にオーバーテイクを仕掛けたんですけど、併走したときにちょっと接触しちゃって。路面も滑りやすい状況だったのでスピンしてコースアウトしちゃったんです」と上村は説明する。

 このアクシデントで上村はST-Xクラス最後尾に戻るだけではなく、ST-Zクラスのマシンにも先行を許してしまったが「速さはあると思ったので、気持ちを切り替えて追い上げに入りました」と語るとおり、2周目以降はアクシデントを跳ね除けるハイペースで周回を重ね、5周目にはST-Zクラスをかわすと、ST-Xクラス最後尾を脱するためにさらにプッシュを続けた。

■不利な条件のなか“恵みの雨”が勝利へと導く

 第2スティントを務めた永井がジェントルマンドライバーのなかで最も速いペースで37周を走りきると、第3スティントで再び上村が乗り込んだ。ST-Xクラス全車が第3スティントに入ると、Porsche Center Okazaki GT3Rがトップに浮上し、15秒後方から2番手のHIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3が上村を追う展開に。

 終盤、上位2台のギャップはわずかに上下することもあったが、レースの主導権を握っていたのは上村だった。「ギャップが縮まったらこっちもペースを上げて戻せばいいだけだから」というピットからの指示のとおり、上村はタイヤとクルマを労わりながら周回を重ね、10秒のギャップを守ったままトップでチェッカーを受けた。

 一見すると圧勝ともいえるレース運びとなったPorsche Center Okazaki GT3Rだが、なぜここまでライバルよりもハイペースで周回を重ねることができたのだろうか。

「ポイントは雨です。雨量が多ければ多いほど我々にとっては有利な状況でした。第1スティント後半にレコードライン上が少しづつ乾いてきたんですけど、その時はライバルの方がいいペースで走っていました。もし路面が乾いていく方向であれば、結果は変わっていたと思います」と上村は話す。

 というのも、今回PORSCHE CENTER OKAZAKIが持ち込んだポルシェ911 GT3Rは2019年のGTワールドチャレンジ・アジアに参戦した個体そのもの。アジアを転戦するクルマだけに海外サーキットのデータは持っていたが、SUGOの走行データは持ち合わせていなかった。

 走行データ不足に加え、スポット参戦のためハンデウエイト10kgを積む不利な条件でレースウイークを迎えることとなったが、“恵みの雨”が降ったことでライバルとの差が縮まったのだ。

 またポルシェがウエット路面でも強いことも勝因のひとつだろう。リヤエンジンのポルシェは、トラクションがかかりやすく、ライバル勢もポルシェのウエットでの速さは認めている。さらに、第2スティントを務めた永井はスーパーGTでも示しているとおり、ジェントルマンの中では別格とも言える存在でもある。

 そして忘れてはいけないのは、スタートから3つポジションを上げ、アクシデントで順位を落としてからも猛烈なレースペースで首位に躍り出た上村の活躍だろう。

 レース後、オーナードライバーの永井は「GTワールドチャレンジ・アジアがキャンセルになって、代わりに上村くんの速さをみせる場所をなんとか作れないかと思ってスポット参戦を決めました」とスーパー耐久へのスポット参戦の理由を明かした。

「今回は彼の速さをみせることができて、よかったと思います。最初にやらかしていましたけど、ご愛敬ということで(笑)」と上村の走りを満足げに語った。

 次戦となる第3戦岡山へも参戦を予定しているPorsche Center Okazaki GT3R。

 上村は「僕は兵庫県出身で、岡山国際はホームコースです。ポルシェカレラカップジャパン(PCCJ)でも今年2勝を挙げることもできているので、自信をもって臨みたいです。スポット参戦ですが、SUGOに続く連勝ができれば良いなと思います」と語っており、次戦もST-Xクラスは目が離せないレースが繰り広げられそうだ。

2台のST-Xマシンを背後から狙う#16 Porsche Center Okazaki GT3R(永井宏明/上村優太)
#9 MP Racing GT-Rを追う#16 Porsche Center Okazaki GT3Rの上村優太
#16 Porsche Center Okazaki GT3R(永井宏明/上村優太)
#16 Porsche Center Okazaki GT3R(永井宏明/上村優太)

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