口溶け追求!横濱ビーフ 育成10年 「ブランド力高めたい」

 神奈川県産のブランド牛「横濱ビーフ」の育成が10年を経て軌道に乗ってきた。6年前からは口溶けのよい脂肪成分の検査を実施し、餌の改良や血統を重視した牛の育成に取り組んできた。生産農家でつくる推進協議会は「おいしい商品を供給し、ブランド力を高めていきたい」と話す。

 「横濱ビーフ」は協議会会員が育てた県産黒毛和牛種で、上位4等級以上にランクされた牛肉を認定する。

 協議会は横浜、藤沢、平塚市など県内13軒の生産農家が2005年3月末に結成。出荷数は本格出荷初年の06年の181頭から徐々に増え、13年には341頭に。横浜や東京の食肉市場などに卸している。会員が計3軒減ったこともあり、15年は288頭にとどまったが、「発足当初より平均単価が上がり、評判もいい」(同協議会)という。

 転機は10年6月。出荷先の一つ、神奈川食肉センター(厚木市)で県畜産技術センター(海老名市)によるオレイン酸の含有量検査を始めたことだった。オレイン酸は肉の口溶けを左右する脂肪酸とされる。検査に抵抗を示した会員もいたが、科学的においしいことを証明しようと踏み切った。

 協議会会長で、横浜市戸塚区の生産農家小野浩二さん(50)は最初の検査で受けた衝撃を忘れない。「結果が思っていたよりも悪く、井の中の蛙(かわず)だったことを思い知った」。それ以降、数頭ながら検査を毎週実施。若手中心に改善に取り組んでいる。

 まずは餌の配合。基本飼料にビールの搾りかす、おからなどを加えて発酵させていたが、この割合を変えた。

 牛そのものにもこだわった。協議会規約では生産基準として、但馬牛の血統を選定することが記されているが、加えて、オレイン酸の数値を活用して、よりおいしい牛の確保に力を入れる。

 県畜産技術センターは「陰の努力もあり、最近では高い数値を維持している」と評価する。

 焼き肉店を自社グループで経営する小野さんは「見た目がいい牛でもおいしくないと、今の消費者には通用しない」と話す。

 環太平洋連携協定(TPP)が大筋合意し、牛肉の関税は段階的に引き下げられる。海外産との競争が激しくなることが予想され、経営環境は厳しさを増しそうだが、悲観だけではない。同協議会は「大消費地を抱え、ブランド力アップなどで販路拡大の可能性を探りたい」と意気込む。

© 株式会社神奈川新聞社