聴覚障害者に硬式普及へ 横浜で設立の日本ろう野球協会、代表候補も活動再開

今春の合宿には多くの硬式野球の選手が参加した(日本ろう野球協会提供)

 聴覚に障害がある人への野球の普及を目的に、一般社団法人「日本ろう野球協会」(横浜市都筑区)が1月に設立された。歴史が浅く選手が少ない聴覚障害者の硬式野球のすそ野を広げ、世界規模のスポーツの祭典「デフリンピック」への野球導入や、国際大会への選手派遣を目指している。新型コロナウイルス感染症の影響で中断を余儀なくされた、ろう野球硬式日本代表候補の活動も再開。17日には三浦学苑高佐原グラウンド(神奈川県横須賀市)で練習を行う。

 国内での聴覚障害者の野球は、50年を超える歴史を持つ軟式が主流だ。日本ろう野球協会によると、聴覚障害者だけのチームは全国に数十あり、「選手は千人程度いる」という。だが硬式は、過去にろう学校の高野連加盟が認められていなかった影響などもあり、普及が進んでいない。多くの聴覚障害の子どもが通うろう学校・聴覚障害特別支援学校に硬式野球部はない(今年2月現在)という。

 一方、聴覚障害者野球の国際大会では使われるのは硬式球。その状況を踏まえ、硬式の普及と軟式の推進を活動の二本柱として協会が発足した。現在の会員は59人で、うち57人が硬式事業部に所属。軟式経験者のほか、クラブチームや一般の高校で硬式野球を経験した選手もいるという。

 3月に行われた日本代表候補の選考会に参加した安藤北斗さん(21)=横浜市出身=もその1人。聴覚障害がある安藤さんは小学生で野球を始め、甲子園出場を目指し佐久長聖高(長野県)に進学した。「3年の夏に甲子園に出場し、ベンチ入りできたことがうれしかった」という。現在は富士大(岩手県)の4年生で、野球を続けている。

 今年は8月に硬式野球の国際大会が20年ぶりに開催されることになり、代表候補チームは6月に横須賀市内で練習を行う予定だった。だが、新型コロナの影響でいずれも中止に。チームの活動も中断していたが、今月いよいよ再開する。監督の野呂大樹さんは「まずは選手とのコミュニケーションを第一に、長所を見いだせるようにしたい」と意気込む。

 このほか、ろう学校に硬式野球部を立ち上げる活動なども行っていく。協会は「国内で聴覚障害の硬式野球の土壌をしっかり築くことで、これから野球をしたい子どもたちや観戦をする人に、勇気を与えられるよう頑張りたい」としている。

 同協会のホームページは(https://jdba2020.jp/)。活動のためのスポンサーも募集している。

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