低山でも注意を 浦上署の遭難者救助訓練 記者も岩屋山に登ってみた!

応急担架で遭難者役を運ぶ訓練をする署員=長崎市、岩屋山

 秋の行楽シーズン。初心者でも登りやすい山として親しまれている長崎市の岩屋山(標高約475メートル)では、平日も登山者の姿が次々と見られる。浦上署が実施した山岳遭難救助訓練に合わせ、登山初心者の記者が同行し、山に潜む危険や登山の注意点を教わった。
 9日午後1時半、同市岩屋町の岩屋神社。紺色の出動服を着た11人の署員に続き、約1.1キロ先の山頂を目指して出発した。
 山道を進んでいくと、急斜面に沿った狭い道やルートが分かりにくい箇所もあった。一瞬気を緩めると、浮き石に足を取られそうになった。しばらくして、先頭を歩いていた伊賀輝希地域課長が頭上を指して立ち止まり、一行に呼び掛けた。「木が倒れてきそうなので注意して」
 午後2時半ごろ。山頂手前の分岐点で待機していた県山岳連盟山岳レスキュー研究会と合流。メンバーの指導の下、遭難者がけがなどで動けなくなったという想定で訓練が始まった。署員が土のう袋などを使って応急担架を作り、足場の悪い山道で遭難者役を運んだ。さらに、崖の下に遭難者がいる想定で、ロープを使った崖の降下訓練をした。
 県警地域課によると、昨年県警が関わった山岳救助は県内で13件(26人)。そのうち3件が岩屋山だった。登山道は10ルートほどあり、ほとんどは道に迷ったケースだった。
 同研究会によると、登山では、息切れしているのに無理をして過呼吸になったたり、足がつって動けなくなったりすることもあるという。同会の間安廣さんは「低い山でも簡単に見てはいけない。水や非常食、防寒着を備え、家族などに登山口や帰宅予定時間を伝えること、午前中から登ること、1人では登らないことが大切」と話す。
 訓練を終え、いざ頂上へ。訓練後とは思えない速さで登る署員の後ろで、記者は息切れしながら急斜面をはい上がる。午後3時半、やっと頂上に着いた。一面に広がる長崎市を背景に皆で集合写真。危険が潜む斜面を登り切ったからこそ、頂上からの景色と秋風は格別だった。

 


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