アパート経営の固定資産税はいくらなのか?賃貸経営のメリット・デメリットを解説

アパート経営で発生する税金は、多岐にわたります。固定資産税もそのひとつで、土地・建物の所有者は必ず納めなければなりません。こちらでは、固定資産の基礎知識や算出方法に加え、アパート経営のメリット・デメリットなどを紹介します。

アパート経営で課せられる固定資産税とは?

アパート経営を目的に不動産を取得した場合、固定資産税などの税金がかかります。固定資産税とは、土地・建物および償却資産の所有者(納税義務者)が納める地方税の一種です。

固定資産税は、その年の収益にかかわらず納めなければなりません。極端な例でいうと、収益がゼロの場合でも支払う義務があります。つまり、アパート経営では自動的にかかってくる税金です。

ほかにも税金が発生する

アパート経営で発生する税金は、固定資産税だけではありません。アパート経営で得た不動産所得は課税対象であり、所得税や住民税、個人事業税などがかかります。所得税は、その年の利益(所得)に応じて税率が高くなる「累進課税制度」を採用。計7段階の税率が設定されており、所得金額によって税率が変動します。

住民税は、居住地域の自治体に納める税金です。都道府県税が4%、市町村税が6%の計10%が所得に応じて課せられます。意外に負担の大きい税金のため、しっかりと考慮しましょう。

消費税は課税売上が1000万円を超えた場合のみ、翌々年から課せられます。家賃や礼金は課税対象にならない一方、居住者以外が使う施設・サービス(コインパーキングや貸し事務所など)を展開する場合は、課税対象となります。

個人事業税は、一定規模のアパートを経営する所有者に課せられます。不動産所得が290万円以上、かつ計10戸以上の賃貸アパートを所有する場合、個人事業税を納めなければなりません。所得金額から事業主控除(年間一律290万円)を引き、不動産賃貸業の標準税率である5%をかけた金額を支払います。

固定資産税の計算方法

固定資産税の納税額は、「課税標準額×1.4%(標準税率)」で算出可能です。ここでいう課税標準額は「固定資産税評価額」と同額です。市町村により評価基準が異なるものの、一般的には、不動産売買価格(時価)の6~7割を目安に定めます。

たとえば、2000万円で売買されている家屋と、1500万円の土地を同時購入するとします。それぞれ固定資産税評価額に換算すると、家屋は約1400万円、土地は1050万円です。各評価額に1.4%をかけ算し、合計すると以下のようになります。

・家屋:1400万円×1.4%=19万6000円
・土地:1050万円×1.4%=14万7000円
・合計:34万3000円

敷地面積200㎡以内の土地には、固定資産税評価額を1/6に減らす特例が適用されます。その場合、「1050万円×1.4%×1/6=2万4500円」という計算式で、家屋の納付額を足すと22万500円となります。約8万円の節税効果があるため、土地が要件を満たすなら活用したいところです。

都市計画税が発生する場合がある

アパートが市街化区域に所在する場合、都市計画税が発生します。都市計画税とは、都市計画事業や土地区画整理事業などに充てられる地方税のこと。毎年1月1日時点の土地・建物所有者に課せられます。実際の課税額は「固定資産税評価額×0.3(標準税率)」で算出されます。

「余計に税金を持って行かれるのか…」と思うかもしれませんが、これにはメリット・デメリットがあります。最大のメリットは、当該区域の住環境整備によって高い入居率が期待できることです。道路や上下水道が整備された結果、人口が増加し、結果的に入居率も高まる可能性があります。単に市街化区域に指定されているだけでも、集客効果があるのは事実です。

デメリットはやはり、出費がかさむことです。固定資産税と同じく年に一度税金を納めなければなりません。少しでも負担を軽減したいなら、市街化区域外にアパートを所有するのがおすすめです。ただ、市街化区域は一定の入居率が期待できるため、家賃設定を高めにし、その分で税負担をカバーするといった考え方もできます。

なお、現時点のアパートの所在地が市街化区域外であっても、将来的に指定される可能性はあります。その際はオーナーの意思にかかわらず、都市計画税を納めなければなりません。購入予定のアパートの所在地、また所有物件の所在地が市街化区域内かどうかは、以下の方法で調べられます。

・自治体に問い合わせる
・不動産会社に問い合わせる
・インターネットで検索する

正確な情報を得るためにも、自治体に問い合わせるのが確実です。アパート経営をはじめる前は、検討物件が市街化区域にあるか否かを確認しておきましょう。

固定資産税の支払い時期は?

固定資産税の請求タイミングは原則、6月・9月・12月・2月の年4回です。自治体によって違いがあるものの、このスケジュールで納めるのが一般的です。オーナーが希望すれば一括で納めることもできます。詳しい支払時期については、各自治体の窓口やホームページで確認してください。

納税対象者は、「1月1日時点」に土地・建物の所有権を持つ人です。同年4月1日~翌年3月31日までの1年間分の年4回、あるいは一括で納めます。ただ、一括払いによる割引などの特典はありません。毎年4~6月頃に自治体から納付通知書が届くため、その案内通りに対応してください。

固定資産税を納付しなかった場合

固定資産税は所得税・住民税などと違い、申告式の税金ではありません。各自治体から納付通知書が届くため、その内容に沿って支払います。納付通知書には期限が設定されており、支払いを忘れた場合は延滞金が発生します。

遅延金の金額は、納期限の翌日から1カ月以内は年率3%、それ以降は年率9%です。納付が極端に遅れると、自治体から電話対応などの催促があります。よほど遅れない限り差し押さえなどは行われませんが、アパート経営者は注意が必要です。

アパート経営をはじめるメリット・デメリットとは

アパート経営のメリット・デメリットを紹介します。アパート経営は不動産投資であり、れっきとした事業でもあります。投資のリスクなどを正しく理解し、適切な運用を心がけましょう。

アパート経営のメリット

アパート経営には、以下3つのメリットがあります。一定の家賃収入が得られるのはもちろん、近年は老後の年金対策として、アパート経営をはじめる方も増えています。

ローリスク・ロングリターンで収入が見込める

株式投資や投資信託に比べると、アパート経営は「ローリスク・ロングリターン」の堅実な投資と考えます。投資のため相応のリスクは存在しますが、入居者がいる限りは失敗しづらく、向こう何十年にわたって利益が得られます。

アパート経営をはじめる方の多くが、投資用住宅ローンを利用するのが基本です。ローン返済中は家賃収入を返済に充て、完済後は諸経費を差し引いた金額がそのまま利益になります。長期目線で考える必要があるからこそ、ロングリターンと表しています。

アパート経営は、自己資金が少なくても気軽にはじめられます。銀行から受けた融資を最大限活用すれば、少額の自己資金にレバレッジが利き、大きな利益を狙えます。最初に購入した1軒のキャッシュフローさえ安定すれば、将来的に物件数を増やすことも可能。さらなる事業規模拡大が望めます。

生命保険のかわりになる

アパート経営に欠かせない保険のひとつに、「団体信用生命保険(以下、団信)」があります。団信は住宅ローン契約時に加入する保険で、契約者に不慮の事態(死亡・重度の障害など)が生じた場合、保険会社がローンを完済するシステムです。

団信に加入するメリットは、ローン返済がなくなる一方で、土地・建物をそのまま残せることです。契約者が死亡した場合、遺族は引き続きアパート経営による家賃収入が得られます。このような側面から、団信は生命保険としての役割も担います。なお、団信の保険金は、各時期の家賃を想定した額が振り込まれます。直近の金利上昇などによる損失が少ないのも魅力です。

老後に向けての年金対策になる

アパート経営には、年金対策としての側面もあります。通常の個人年金の場合、60~65歳といった受領年齢に達するまで、毎月保険料を支払わなければなりません。一方のアパート経営は、借入金の返済を家賃収入でカバーできるほか、キャッシュフローが良好なら多少の利益も得られます。

ローン完済後は、家賃収入の大部分が利益となります。年金と同じ形で受け取れるため、老後の資金不足を解消できます。投資用住宅ローンの返済期間は、最大35年間。仮に30歳でアパート経営をはじめたら、65歳でローン完済となります。老後の暮らしを豊かにするためにも、早い段階でアパート経営をはじめるのが得策です。

アパート経営のデメリット

アパート経営のデメリットは、次の通りです。

空室、滞納のリスク

不動産運用において空室・家賃滞納リスクはつきものです。アパート経営は入居者ありきで成り立つため、空室が多いほど収入が減少します。空室期間が長引くにつれ、ローン返済に自己資金を充てる必要もあります。投資計画に狂いが生じる前に空室対策を講じなければなりません。また、家賃滞納リスクを回避するため、家賃回収の代行サービスを利用するのもひとつの手です。

経年劣化や災害による建物の修繕

アパート経営を長く続けていると、経年劣化による建物の老朽化、自然災害による破損・倒壊は避けられません。とりわけ近年は地震・豪雨・台風などの自然災害が深刻化しており、多くの建物が被害を受けています。修繕費の負担がかさむほか、アパート経営が継続困難になるケースも考えられます。

資産価値の下落リスク

将来的に投資資金を回収する場合、アパートを売却するケースもあります。その際に懸念されるのが、地価の下落です。周辺エリアの地価が下がると、建物の資産価値や家賃相場が低くなる可能性があります。また、建物の価値には「減価」という考え方があります。築年数が長くなればなるほど、売却損が出やすくなるため注意してください。

アパート経営には固定資産税の特例軽減措置がある

固定資産税の特例軽減措置が適用されると、納めるべき税金が軽減されることも。一般住宅用地および特定市街化区域農地は土地評価額の1/3、小規模住宅用地は1/6が減額されます。農地については、住宅用地と税負担の均衡を図る目的で特例措置を設けています。使わない農地の宅地転用などを検討している場合、事前に確認しておきましょう。

新築住宅の固定資産税においては、「居住床面積の120㎡相当分」について3年間・5年間軽減されます。ただ、店舗併用住宅は、居住床面積の割合が1/2以上でなければ適用されません。特例措置はケースバイケースな部分もあるため、詳しくは当該地域の市町区村に問い合わせてください。

土地を更地のまま所有するより住宅を建てることで高い節税効果がある

固定資産税をはじめ、土地・建物を所有しているだけで発生する税金は少なくありません。更地の土地を所有している場合、駐車場にしたり、アパートなどの住宅を建てたりするだけで、税金対策になります。ポイントは、不動産運営に欠かせない必要経費です。

アパート経営では、管理費・広告宣伝費・修繕費・保険料などの費用がかかります。これらを経費として計上すれば、その分だけ納める税金が減るはず。とくに居住部分の修繕費、設備交換費用などは高額化しやすく、大きな節税効果が期待できます。なお、アパートの一室を事務所にすれば、仕事で使う床面積の部分も必要経費として計上可能です。

適用の対象となる住宅とは

特例軽減措置の対象となる住宅は、以下の通りです。

・専用住宅:居住の目的だけに建てられた住宅(一戸建て・アパート・マンションなど)
・併用住宅:ひとつの建物を居住部分と業務部分にわけた住宅(店舗併用住宅など)
・空き家:管理されていない「特定空き家」は除く

併用住宅においては、層床面積に対する居住スペースが1/4以上であれば対象になります。また、空き家も対象になるのが特徴です。2015年の税改正までは、人が住まない住宅は空き家のままにしておくほうが税負担を抑えられました。改正後は、管理されていない空き家を「特定空き家」とし、固定資産税における特例軽減措置の対象から外されています。

固定資産税について詳しい相談は税理士がおすすめ

納付の遅れによる遅延金や固定資産税の計算ミスによる過払い金発生を防ぎたい。固定資産税についての専門家である税理士に相談するのがおすすめ

毎年納めるにもかかわらず、費用負担が意外と大きい固定資産税。納付が遅れると遅延金が発生したり、差し押さえを受けたりする可能性があるため、通知書が届いたら漏れなく納めましょう。

固定資産税については、専門家である税理士に相談するのがおすすめです。近年は固定資産税の計算ミスによる過払い金が発生しており、専門家に税相談することで、納めた税金が還付・減額される可能性があります。

© 株式会社プロポライフグループ