横浜で相次ぐ「陽性」取り下げ 抗原検査、簡易迅速も精度低く 市「症状みて総合判断を」

抗原検査とPCR検査の違い

 新型コロナウイルス感染症を巡り、抗原検査でいったん陽性者として発表されたものの、その後、訂正される事例が横浜市で相次いでおり、全国的にも散見されている。簡易で迅速な一方、精度が低いという抗原検査の弱点が浮き彫りになった形で、横浜市の船山和志・健康安全医務監は「検査結果だけで判断せず、症状や行動記録なども含めて総合的に診断してほしい」と呼び掛けている。

 市では、8月23日から10月1日にかけて、計約1370人の感染を発表。そのうち、計7人の発生届が後日、医療機関から取り下げられた。1人は検査結果の誤認によるものだったが、6人は抗原検査で陽性とされたものの、その後のPCR検査の結果などを踏まえ、疑いが低いとされた。

 PCR検査は、鼻の奥の粘液や唾液からウイルス特有の遺伝子配列を増やして見つける検査で、所要時間は4~6時間。ただし、専用の設備がある検査機関まで検体を運ばなければならず、本人に結果を通知するまでに1~2日を要するという。

 一方、抗原検査は鼻の奥の粘液からウイルス特有のタンパク質である「抗原」を15~30分で検出する。「検査態勢の充実につながる」と、簡易検査キットが5月に厚生労働省に承認されたが、精度は「陽性者を30%程度見落とす」とされるPCR検査よりも低く、厚労省の手引きでは無症状者への使用やスクリーニング検査には適さないとされる。

 ただ、それにもかかわらず横浜市内の一部の医療機関では、症状を問わず新規の入院患者全員に抗原検査を実施しているといい、実際、発生届が取り下げられた6人のうち3人は入院時のスクリーニング検査によるものだった。

 「他に頼る手段がないからではないか」。船山氏は、早期に陽性者を判別して感染拡大を防ぎたい医療機関の思惑を推し量る。市内ではこれまで、13の医療機関でクラスター(感染者集団)が発生。ほとんどが陽性者と分からず入院してきた患者に端を発しているからだ。

 しかし、いったん「陽性」となれば濃厚接触者の調査などで患者本人だけでなく、周辺者や施設などへの負担が重くのしかかる。さらにそれが「偽陽性」と判明すれば、徒労に終わる。

 船山氏は「検査に偽陽性はつきもの。無症状やコロナと関係なさそうな症状を訴える患者が抗原検査で陽性となった場合は、一時隔離して経過を見るなど、慎重に判断してほしい」と話している。

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