<いまを生きる 長崎コロナ禍>伸ばした髪を切る 7歳、初めてのボランティア 

 長崎県五島市の福江小1年、田村真子さん(7)は3歳から伸ばし続けた髪を切り、「ヘアドネーション」活動に寄付した。髪は医療用ウィッグに生まれ変わり、病で髪が抜けた子どもに贈られる。入学前に切る予定だったが、新型コロナウイルス禍で延期に。さらに半年分伸びた髪の手入れには苦労も多かったが、真子さんは「困っている人にあげたい」と、カットを心待ちにしていた。
 17日午前、同市栄町の美容室モンテカンゲ。「じゃあ、いきますよ~」。はさみを手にした店主の八窪ルミさん(49)が鏡越しに語りかけた。少し緊張した表情でうなずく真子さん。腰まで伸びた髪に、ゆっくりとはさみが入った。
 真子さんにヘアドネーションを提案したのは、母親の真由美さん(46)。仕事などでがん患者と接する機会があり、「治療で髪が抜けた人が外出する手助けになれば」と真子さんに持ち掛けた。髪が絡まないように普段から三つ編みにし、入浴後は時間をかけて乾かした。真由美さんは「真子も大変だったと思うけれど、小さい頃に人のためになることをしたと、大人になっても覚えていてほしい」と願う。
 寄付先は18歳以下の子どもたちに医療用ウィッグを無償提供している大阪市のNPO法人「JHD&C」(通称ジャーダック)。ジャーダックによると、新型コロナの影響で5月下旬まで3カ月間、髪の寄付の受け入れを停止した。一方で受け入れ再開後は、発送を待っていた多数の「善意」が全国から一気に寄せられたという。

少し緊張した表情でカットを待つ真子さん

 真子さんも3月に切る予定が先送りとなり、髪は半年で5、6センチほど伸びた。今回切り落とした髪は約43センチ。規定の「31センチ以上」を十分に超える長さだった。
 カットを終え頭が軽くなったのを確かめるように、何度か首を左右に振り、にっこりとほほ笑んだ真子さん。切った髪の束を持って「ワカメみたい」とおどけつつ、「髪がなくて困っている人にあげたい。うれしい」と話した。
 ジャーダックによると、ウィッグを必要とする子どもたちの採寸作業も、コロナ禍で中断。この秋から「自宅でのリモート採寸」の形で再開された。真子さんの髪もやがてウィッグの一部となり、誰かの助けとなる。人生初のボランティアを終え、記念写真に納まる真子さんは、どこか誇らしげな表情を浮かべていた。

カットした髪を手に、「困っている人にあげたい」と誇らしげな真子さん=五島市栄町、モンテカンゲ

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