時速500㎞を乗り比べ、超電導リニアL0系と改良型で「乗り心地」の差はいかほど?【乗車記】

時速500㎞で走行する超電導リニアL0系改良型試験車

2020年10月19日(月)、山梨リニア実験線で超電導リニアL0系改良型試験車の内装が報道陣に公開され、二つの車両に乗り比べる試乗会が行われました。本稿では改良型試験車と従来型のL0系を乗り比べて感じた”差”を紹介します。

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こんな案内も 走行するのは実験線内だけですが
超電導リニアに乗り込む報道陣

まず座席から見ていきましょう。改良型の座席は東海道新幹線N700Sのグリーン車にも匹敵する大きさです。座面と連動するリクライニングのおかげで深く腰をかけてもしっかりとした密着感があり、リラックスできる座り心地でした。

設備面にはおおむね不満はなく、肘掛けの仕切りなど従来の車両にも逆輸入して欲しいものもあります。ただコンセントがUSBコンセント(Type-A)になっているのは惜しいところ。現時点でもType-Aは半ば時代遅れになりつつあることを考えると、営業車両投入時には仕様が変わる可能性もありそうです。

走行試験では、まずは時速350㎞で終点の上野原市へ。そこから時速500㎞で山梨リニア実験線(42.8㎞)を一往復します。車内にはモニターが何枚かセットされており、現在位置とスピードが分かるようになっていました。

12時20分頃、試験開始。しばらくすると身体が浮くような感覚がありました。リニアが車輪走行から浮上走行へと移ったのです。体感としては「少し揺れる飛行機」のようで、もし乗車時からずっと目を閉じていれば、脳はこの乗り物を「飛行機」として認識したかもしれません。

速度がぐりぐり上がっていくのを見るだけで楽しい!
窓は狭くトンネル区間も多いため、風景を楽しめるのはほんの一瞬

上野原市から今度は折り返しで笛吹市(起点)へ。リニアは徐々にスピードを上げていき、やがて時速500㎞の世界へ突入します。時速500㎞というと何となく特別感がありますが、乗車感はそれまでとほとんど変わらず、身体への負担が増す感じはありませんでした。

トンネル内では外の景色も分からないため、流れていく風景からスピード感を把握することもできません。ただひたすらに時速500㎞の世界へ向かって数字が変わっていく。それを頭だけで理解する。不思議な感覚です。

500㎞/hに到達するたびにシャッター音が鳴り響いていた

目的地が近づくと、リニアは浮上走行から車輪走行へと切り替わります。着地の瞬間に衝撃を感じた方もいらっしゃるようで、他メディアの改良型試験車の乗車レポートでは指摘されていますが、記者は改良型試験車の試乗では何も感じませんでした。

単に感覚が鈍かったのだろうと思われますが、改良型試験車は従来のL0系と比較して揺れや騒音が抑制されているため、そうした浮上走行⇔車輪走行の切り替わり時にかかる衝撃も和らげられているのかもしれません。

L0系は揺れる、騒音は大差なし?

従来のL0系座席

改良型試験車の次は従来型のL0系に乗車しました。座席は改良型試験車と比べると簡素なつくりで、やや小さめです。とはいえ座席幅455㎜は決して小さなものではなく、改良型に乗った後でなければ物足りなさを感じることもなかったでしょう

乗り心地を改良型と比較すると、騒音に関しては大きな差はないように感じました。移動中の雑談も十分可能です。しかし「揺れ」は改良型の改善ぶりがはっきりと感じられる程度に大きく、仮に営業車両でこの揺れを感じたら、キャップの付いていない飲み物は持ち込みません。浮上走行から車輪走行への切り替わる際の衝撃も、今回はしっかりと感じられました。

率直な感想を述べると、L0系は「品川~新大阪間最速67分」という短い乗車時間ゆえに許容される座席である、というイメージです。一方で改良型試験車はこのまま営業車両として投入されても十分に満足できる水準に達しており、これからさらにブラッシュアップして乗り心地が良くなるのかと思うとワクワクします。

体験乗車は未定

超電導リニアの体験乗車は2014年から行われており、JR東海によればこれまでに約11.7万人以上の方が時速500㎞の世界を体感しています。SNS上では体験乗車された方の感想や動画なども上がっており、実に多くの方が「リニア」の一端に触れていることが分かります。

残念なことに2019年の第3回を最後に体験乗車はお休みとなっており、現時点では再開時期は未定だそうです。今後体験乗車が再開されるのか、それとも営業車両への投入まで休止が続くのかは分かりませんが、記者としてはこの乗り心地を体験できる機会を広く設けて欲しいと願わずにはいられません。

文/写真:一橋正浩

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