90年代ビーイング系ヒットの原型? ベリンダ・カーライルにもっと脚光を!  1988年 3月19日 ベリンダ・カーライルのシングル「アイ・ゲット・ウィーク」がビルボードHOT100で最高位(2位)を記録した日

共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.74
I Get Weak / Belinda Carlisle

80年代、グループでもソロでも成功した女性シンガーは誰?

グループでの成功の後、そのグループに在籍していた女性シンガーもソロで成功する… そんなパターンの最大典型例はダイアナ・ロス(シュープリームス)であろう。この “グループもソロも” という、両方での女性による成功例は、実は結構稀有なことで、成功例はそれほど多くはない。顕著なところでは前述のダイアナ・ロス以外では、ビヨンセ(デスティニーズ・チャイルド)が挙げられるだろうか。

さてそれでは80年代にそんな例はあったのだろうか… まず双璧として思い浮かぶのは、ジョディ・ワトリー(シャラマー)とベリンダ・カーライル(ゴーゴーズ)だ。ソーラー・レーベルの屋台骨を支えたシャラマーの紅一点シンガーとして活躍したジョディは、ソロとして特に80年代後半にヒットを連発した(『ジョディ・ワトリー、来るべき R&B ブームの先陣を切ったポップアイコン』 参照)。

一方ベリンダは、女性だけのロックバンドのリードシンガーとして活躍後、やはり80年代後半にソロとしてヒットを連発、グループ時代をも凌ぐ成功を収めている(ゴーゴーズに関しては『先輩からの愛のムチ?ゴーゴーズのトップを阻んだジョーン・ジェット』 参照)。

80年代前半ゴーゴーズは最強の女性ロックバンドとしてシーンに君臨していた。3枚のアルバムをリリース、コンスタントにシングルヒットを放っていたが、1984年に解散となる。入れ替わるようにバングルスが大ブレイクを果たし、80年代後半の最強女性ロックバンドとなっていったのは、なんとも皮肉な現象ではあった。

ゴーゴーズで果たせなかった悲願の全米ナンバーワン!

ところでバングルスは全米ナンバーワンソングを2曲輩出している。一方のゴーゴーズは、結局1曲も全米トップ作品を残すことはできなかった。ベリンダが1986年にソロ・デビューして、初の大ヒットとなった「マッド・アバウト・ユー(Mad About You)」(1986年3位)は最高位3位。

およそその半年後バングルスが「エジプシャン(Walk Like An Egyptian)」(1986年1位)でグループにとって初の全米ナンバーワンを獲得したことは、ベリンダにとって大いなる発奮材料になったことは想像に難くない。“ゴーゴーズで果たせなかった悲願の全米ナンバーワン、絶対獲ってやる!(バングルスに負けてられるか!)”と。

そこからさらに、およそ1年後セカンドアルバムからのリードシングル「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース(Heaven Is A Place On Earth)」(1987年1位)で、その悲願は達成される。ゴーゴーズの初チャートインからおよそ6年越し、まさしく執念の成就だった。そして続くシングル曲が立て続けに大ヒットを記録、“ゴーゴーズのベリンダ” から “ソロディーヴァ・ベリンダ” への脱皮が完成する瞬間のヒットということになる。それが80年代72番目に誕生したナンバー2ソング「アイ・ゲット・ウィーク」(1988年3月2位)だ。

ソロシンガー、ベリンダ・カーライルの実力にもっと脚光を!

80年代後半ベリンダはソロとしてトップ10ヒットを4曲残している。ゴーゴーズが2曲だったので、全体的なヒット規模はグループ時代を凌いでいたと言えよう。しかも最高位1、2、3位(もう1曲は7位)というメガヒットを含んでおり、この頃のベリンダは、日本に伝わってくる以上にアメリカでは我が世の春を謳歌していたのだ。

日本における最大共有感ソングは、もちろん全米ナンバーワン「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース」で間違いないだろうが、「アイ・ゲット・ウィーク」は次点に位置するか。デバージ「リズム・オブ・ザ・ナイト」(1985年3位)、スターシップ「愛はとまらない(Nothing’s Gonna Stop Us Now)」(1987年1位)等で台頭したヒットメイカー、ダイアン・ウォーレンの見事な手腕も見逃せない。90年代のビーイング系は、この辺からヒントを得ているよね。

ベリンダ・カーライルの(短い間ではあったものの)80年代後半の立派な実績は再評価するべきものだし、ソロ女性シンガー・ムーヴメント全盛時という側面があったとはいえ、この時期の彼女のシンガーとしての実力にもっと脚光を浴びせていいのではないだろうか。その歌声には、ゴーゴーズ時代からの歓喜と辛酸が滲み出ているのだから。

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カタリベ: KARL南澤

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