九州新幹線長崎ルート 議論の現状 長崎・佐賀両新聞 社長対談

◎長崎新聞社長・徳永 暫定開業へ機運盛り上げ

 長崎県、経済団体、沿線自治体は全線フル規格を望んでいる。JR長崎駅周辺ではMICE(コンベンション)施設建設のほか、商業施設やホテルが入る新駅ビルなどの再開発計画があり、県都の玄関口の顔は大きく変わりつつある。今年8月には官民27団体と有識者3人でつくる「県新幹線開業効果拡大推進本部」の第1回会合が開かれ、2022年秋の武雄温泉-長崎の暫定開業に向け県内全域の機運の盛り上げに努めている。
 ただ佐世保市は少し事情が異なる。新鳥栖-武雄温泉がフル規格で整備された場合、この区間が並行在来線とみなされ、JR九州から経営分離される可能性を心配している。そうなれば佐世保-博多を直通している特急みどりが運行されなくなったり、武雄温泉で在来線と新幹線を乗り換えたりするケースも想定され、もろ手を挙げてフル規格に賛成とはいかなくなる。長崎県も理解しており、JR九州に対し経営を継続するよう求めている。
 昨年7月の参院選の県内世論調査(840人回答)によると、新鳥栖-武雄温泉のフル規格整備について「賛成」「どちらかといえば賛成」は59.6%。「どちらかといえば反対」「反対」の22.9%を大きく上回った。「分からない・無回答」は17.5%だった。

◎佐賀新聞社長・中尾 フル推進派の動き 活発に

 佐賀県内でフル規格を推進する人たちの動きが活発になっている。発端になったのが、6月に国土交通省が佐賀県に提案した複数の整備方式に対応する環境影響評価(アセスメント)案だ。数年にわたり協議する間、先行してアセスを実施することで着工までの期間を短縮する狙いがある。
 国交省は9月末までに佐賀が同意すれば、2023年度着工に向けた北陸新幹線(敦賀―新大阪)とセットの財源議論に間に合うと迫った。佐賀は「アセスによって23年度着工に間に合うのは佐賀駅を通るルートのフル規格だけで、フル規格の受け入れと同義だ」として拒否した。
 9月定例県議会は「新幹線議会」の様相で、自民党県議団はアセスに同意するよう県に求める決議を目指したが、自民会派内も一枚岩とは言えず、「国との積極的な協議を求める」とする内容にとどまった末、賛成多数で可決した。
 自民党県連は10月上旬、決議を携えて政府与党の幹部らに要望活動をした。この機を逃せば後がないとの危機感からフル規格推進の動きが目立つが、県民世論としては依然としてフル規格に慎重な声が多いとみられる。

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