マツ林の面積縮小を 「松くい虫」の防除対策

元森林総合研究所九州支所長 吉田成章氏(74)

 森林総合研究所の元九州支所長で、小値賀町のマツ林保全計画検討会の委員を務めた吉田成章氏に松くい虫の防除対策などを聞いた。
 -防除の方法は。
 大きく分けて三つの方法がある。カミキリが枝をかじり、センチュウを移す前に、殺虫剤を空中や地上からまく「予防散布」。健全なマツに事前に薬を注入しておき、センチュウの侵入を阻止する「樹幹注入」。枯れマツに寄生したカミキリの幼虫を殺すために、マツを伐倒して焼却、破砕する「駆除」。
 -防除は焼却などの「駆除」に行き着くと聞く。松くい虫の根絶は可能か。
 外来種のセンチュウによる被害なので、感染すれば日本のマツは枯れてしまう。よほど狭いマツ林でない限り、被害木を全て探し出すことはできない。1本でも枯れマツが残れば、そこから感染が広がることになる。根絶は難しいだろう。上手に付き合っていくしかない。
 三つの防除方法の一つだけでは被害を防ぐのは難しく、併用する必要がある。樹幹注入は多額の費用がかかるため、どうしても守る必要がある木に使う。
 -小値賀のマツ林復活は難しいか。
 新たに植林しても、防除しなければ枯損は必ず発生し、マツ林は崩壊する。防除には毎年継続してお金がかかるが、被害が拡大すれば対策予算に収まらないこともあるだろう。町の財政を圧迫するようでは維持できなくなる。
 なるべく少額で維持するためには、マツ林の面積を狭めるしかない。そのためには、マツでないと防災や観光資源の機能を果たせない場所以外は、他の樹種に転換していく必要がある。

 【略歴】よしだ・なりあき 福岡県筑後市出身。九州大農学部卒業。1971年、農林省管轄の林業試験場(現・森林総合研究所)に入所、森林害虫の研究に従事した。2006年3月、同研究所九州支所長を最後に勇退後も松くい虫の研究は継続、全国のマツ林被害対策検討委などに参加している。


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