東京スカイツリー周辺で体験できる伝統美「片岡屏風店」の屏風作り

伝統を継ぐ屏風職人

東京スカイツリーから徒歩わずか1分の路地にある、東京で唯一の屏風専門店「片岡屏風店」。ここでは10人の職人が、屏風作りに励んでいます。

屏風とは、部屋を区切ったり、装飾したりするための家具のことです。今回は屏風がどのように作られているか、職人であり片岡屏風店の三代目、片岡孝斗(かたおか こうと)さんを取材しました。スタイリッシュなヘアスタイルとピアスが印象的で、イメージしていた職人像とは少し異なりましたが、仕事について語ってもらうと、職人らしい気質や風格を感じます。

片岡さんが屏風作りを始めてから、7年が経ちました。職人になる前は、アメリカへ短期留学をしていた経験があるそう。そこで日本の伝統文化でもあり、家業の屏風店を強く意識するようになり、お店を継ぎたいと思うようになったと言います。

70年以上も続く片岡屏風店

片岡屏風店は第二次世界大戦終戦後の1946年、現在の東京都墨田区向島で始まりました。ひな祭り端午の節句など、当時は日本の行事に使われる「節句屏風」の作成がメイン。また、婚礼や宴会などの祝いの場に使われる「金屏風」も多く手掛けています。

時代の変化に伴い、日常的にあった屏風も様々な姿へ変化していきました。今では着物や写真、絵画などを屏風に仕立てる「オーダー屏風」も作っています。

片岡屏風店の屏風の美しさは、多くの旅館やホテルからも評価されています。たとえば、トリップアドバイザーで訪日観光客から高い評価を得ている「旅館 澤の屋」。インテリアとして壁に飾られています。

日本の女優である石原さとみさんは、東京メトロのコマーシャル「Find my Tokyo」の半蔵門線 押上〈スカイツリー前〉駅編で、屏風の前で美しい着物姿を披露しました。これは片岡屏風店で撮影したものだそうです。

職人直伝!屏風の作り方

今回は、片岡さんに屏風の作り方を取材しました。屏風には全部で5つの工程があります。まずは、木枠作り。

屏風のフレームで、骨と呼ばれる「木枠」を、釘を使わずに接合させます。この木枠は国内産の杉で作られたもの。強度を上げるため、水を吸って伸びた後の和紙に澱粉のりを付けてしっかりと固定。「骨縛り」と呼ばれる作業です。

のりが乾いたら、「みの貼り」、「みのおさえ」、「袋貼り」という3つの工程を行います。薄い和紙をずらして貼っていくことで、空気の層を作り、さらに和紙を貼り重ねます。この和紙は、屏風全体の強度をさらに強める役割をしているそうです。

和紙を何度も貼り重ね、最後に、絵や写真、金箔、銀箔などを貼り付けます。これが終わると、私たちがよく目にする屏風になりました。

和紙を貼るときは、季節や気候、湿度、また素材の違いによって、水の量や澱粉のりの濃度を調整していると片岡さんは言います。細かく決まりはありませんが、片岡さんの長年の経験によって、その時に合った判断がされているようでした。

小さな「からくり屏風」の制作を体験してみよう

墨田区は、古くからものづくりの街として知られ、江戸時代から続く伝統工芸や明治時代以降にできた時計、石鹸などの小さな町工場などが多くあります。これらの場所は工房の一部を小さな博物館に変え、昔から伝わる技術や商品をより身近に感じてもらう取り組みを行っています。

片岡屏風店では、事前予約で10人以上集まると、「からくり屏風」(税別3,300円)の制作体験ができます。からくり屏風とは、360度に開閉できる和紙にそれぞれ絵柄を付けた屏風のこと。その仕掛けに詰まった知恵の結晶をぜひ体験しに来てください!(対応言語:日本語、英語)

公式HP(日本語のみ)で体験申し込みをする

代表的なおみやげを買おう

店内1Fの一角には大小さまざまな屏風や和紙商品が並んでいます。最寄り駅の近くに郵便局があるため、購入したら海外に発送することも可能です。

片岡屏風店の手がける屏風の一つに、すみだ北斎美術館の館内ショップでも販売されている「北斎屏風」があります。日本を代表する浮世絵師である葛飾北斎富嶽三十六景の浮世絵を屛風に仕立てしました。

葛飾北斎の浮世絵は西洋でも芸術的評価と知名度が高いため、多くの観光客がおみやげとしてこの屏風を買っていくそうです。

日本の伝統美を見つけに行こう

次回、東京に訪れた際には、片岡屏風店を訪ねてみてください。日本の職人がもつ高度な技術で作られた屏風は、見るだけで私たちを楽しませてくれます。

また、小型の屏風も販売しているので、最高の東京みやげが手に入るでしょう。屏風を見るたびに、楽しい東京の旅が思い出されること間違いなしです。

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