くじが当たる噂の「滝行」に今年は某球団も…名古屋の名物“疫病神”アナの通じた願い

滝行をする若狭敬一アナウンサー【画像提供:若狭敬一】

ドラフトで反響の滝行「この間、某球団の方々がいらっしゃいましたよ」

10月19日。雨。最高気温14度。毛穴が引き締まる寒さの中、スーツ姿の私は名古屋市守山区の倶利加羅不動寺に向かった。目的は中日の3年連続ドラフト成功を祈願するための滝行だ。身を清め、冷水を浴び、厄を落とし、念ずれば、くじは当たる。4分の1の根尾昂、3分の1の石川昂弥。過去2年の実績が揺るがぬ証拠となっている。

本堂で住職と再会した。ドラフトの反響は大きく、全国から滝行の予約が殺到しているという。加えて、私は衝撃の事実を知った。

「この間、某球団の方々がいらっしゃいましたよ。球団社長、スカウト部長、それに監督さんまで……」

なんと地方ローカル局のアナウンサーが勢いで始めた滝行が、プロ野球界に噂として広がり、球団幹部が実際に足を運ぶ事態にまで発展していたのだ。これには度肝を抜かれた。

「どうしてもくじを引き当てたいとおっしゃっていました。若狭さんと同じ滝に監督さんが打たれましたよ」

某球団はすでに昨年のドラフト直後、「そちらは中日関係者しか滝行できないんですか」と電話を入れていたらしい。切実であり、本気であり、必死である。それを聞き、私は一層の気合が入った。

本堂の右奥にある滝壺へ向かう途中、住職が丁寧に説明を始めた。「お陰様でこちらの廊下は一昨年、リニューアルすることができました」と満面の笑み。滝行体験者が急激に増えた事実を隠しておいても良さそうだが、正直である。「去年は隣の駐車場にカフェを作りました。今年は外壁を改装しましたし、太鼓を用意することもできました。本当にありがとうございます」。実にピュアすぎる。

地元の中日は3年連続で思い通りのドラフト1位指名…来年も滝行&社内待機は必須!

いざ滝へ。今年も一心不乱に思いのたけを叫んだ。

「与田監督! 今年もくじを当てる! ドラフト大成功! 高橋君! ドラゴンズに来て!」

願いが寒空に響いた。そして、私の頭にはこれまでと同様の映像が浮かんだ。与田剛監督の笑顔、スカウト陣の安堵、ドラゴンズファンの歓喜。今年も絶対うまくいく。

そして10月26日。運命の日を迎えた。朝からドラゴンズブルーの快晴だった。私がドラフト当日に指名候補選手の所へ取材に行くと、くじを外したり、指名すらしなかったりと入団に結びつかないジンクスから、SNSではすっかり疫病神扱いされている。

「若狭をCBCから出すな!」「縄でくくれ!」「幽閉しろ!」と激しい書き込みが散見された。もちろん、今年も社内待機の一択だった。滝行を尽くして天命を待つ。果報は社で待て。やることはやった。

「第1巡選択希望選手、中日、高橋宏斗、投手、中京大中京高校」

願いは叶った。もはや競合さえなかった。脳裏に浮かんだ映像は全て現実のものとなった。恐るべし、滝行&待機。

一方、気になるのは某球団だ。どこの球団で、結果はどうだったのか。しかし、さすがにそれは言えない。うっかり漏らそうものなら、きっと天罰が下る。

何はともあれ、中日はこれで3年連続の大願成就。今後も米村明チーフスカウトには「滝、よろしく」と言われるだろう。また、竜党には「必ず社内待機で」と念を押されるだろう。そして、倶利加羅不動寺の敷地にはもう1つ寺ができるに違いない。(CBCアナウンサー 若狭敬一/ Keiichi Wakasa)
<プロフィール>
1975年9月1日岡山県倉敷市生まれ。1998年3月、名古屋
大学経済学部卒業。同年4月、中部日本放送株式会社(現・株式会
社CBCテレビ)にアナウンサーとして入社。
<現在の担当番組>
テレビ「サンデードラゴンズ」毎週日曜12時54分~
「High FIVE!!」毎週土曜17時~
ラジオ「若狭敬一のスポ音」毎週土曜12時20分~
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