「勇気と笑顔を与えてくれた」ホークスのリーグV奪回に欠かせなかった天国の恩人

9月に急逝した川村隆史コンディショニング担当のユニホームを持つ中村晃(中央)【写真:藤浦一都】

ソフトバンク川村隆史コンディショニング担当は9月15日にくも膜下出血で急逝した

3年ぶりのリーグ優勝を果たしたソフトバンク。この優勝を誰よりも喜んでいるのが、天国から選手の奮闘を見守った川村隆史コンディショニング担当だろう。急逝後からずっとベンチに掲げられてきた川村氏のユニホームは、選手会長の中村晃外野手の手によって歓喜のマウンドへと“駆け寄って”行った。

王手をかけて臨んだ27日の試合前練習では、川村氏へのメッセージ「Thank you ! Takashi Kawamura 01」をデザインしたTシャツを、監督、コーチ、選手、スタッフが全員着用した。ライトブルーの色合いに、明るいキャラクターがそのまま生かされた川村氏の写真。背中に背番号「01」の後ろ姿を入れることで、着用した全員が川村氏の背番号を背負っているようにも見える。

試合前の工藤公康監督は「たくさんの選手に勇気を与えてくれて、笑顔もたくさん与えてくれた人なので、ぜひ川村君のTシャツを着たい、と。選手会と球団で考えて作ってくれましたが、すごくいいアイデアだと思います」と語った。そして「川村氏の力を借りる」という表現ではなく「川村君と一緒に戦っていきたい」と語った。

その思いは選手もきっと同じだったはずだ。川村氏のTシャツでいつも通りに明るく練習に励む選手たちを見ていると「川村さんの力を借りるためじゃない。優勝は自分たちの力で勝ち取るので、天国の特等席で今日の試合を見といてください」と呼びかけているように思えた。

優勝の瞬間、川村氏の背番号「01」のユニホームが歓喜の輪の中へ

そして試合ではロッテに快勝して3年ぶりの優勝を決めた。最後は周東佑京がセカンドゴロをさばいてゲームセット。マウンドの少し前方で抱き合う森唯斗と甲斐拓也のもとへ、守備位置やベンチから一斉に選手たちが駆け寄った。

その時、選手会長でもある中村の手には川村氏のユニホームがあった。ひとときの歓喜を味わって、出迎える監督・コーチ陣と選手がハイタッチ。コーチ陣は中村が手にしたユニホームにも触れて、川村氏と喜びを分かち合った。

優勝記者会見にも出席した中村は、川村氏のことにも触れてこう語った。

「亡くなった時には、みんなロッカーで泣きましたし、本当に信じられなかったんですけど、川村さんが望むことは、僕たちが前を向いて元気に野球をプレーすることだと思ったので、そこでチームがより1つになったと思います」

天国の川村氏は、あの野太い声で「みんばよく頑張ったな~」と言ってくれたはずだ。同時に「は~い、次は日本一、いってみましょ~」といつものアップ時の掛け声のように呼びかけているに違いない。(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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