鷹・周東をどう止める… 走らせないための近道は“出塁させないこと”!?

ソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】

メジャー記録を超える13試合連続盗塁を記録した周東

■ソフトバンク 4-3 西武(30日・メットライフ)

ソフトバンクの周東佑京内野手は30日、敵地メットライフドームで行われた西武戦で、自身の日本記録を更新するとともに、メジャー記録をも上回る「13試合連続盗塁」を達成した。今季トータルではリーグ断トツの49盗塁に。いったい誰が、どうやったら周東を止めることができるのか。

周東は7回1死走者なしから左前打を放ち、この日4打席目にして初めて出塁した。マウンド上の西武3番手・小川は、正対する一塁走者にとってスタートを切りにくい左腕。捕手の森も、29日時点で盗塁阻止率.314を誇り、決して盗塁を決めるのは容易くはない捕手だ。

小川は続く中村晃へ初球を投じる前に、2度牽制球を投じ、周東がやや逆をつかれるシーンもあった。カウント1-1から、もう1球牽制球。それでも周東は続く3球目に、敢然とスタートを切った。

投球は外角にはっきり外れるボール球のストレート。森の送球は若干高く浮いたが、二塁ベース上には来ていた。しかし周東は、余裕を持って二塁に滑り込んだ。

周東が出塁した時から、メットライフドームは異様な静寂に包まれていた。スタートを切った瞬間、わっと歓声が湧き、塁審が両手を広げると、360度から拍手が送られた。野球ファンは周東のお陰で久しぶりに、盗塁のスリリングな魅力を再認識しているようだ。

「世界の盗塁王」福本氏を止めるために堀内恒夫氏はあの手この手で対策

ちなみに、巨人のV9時代のエースである堀内恒夫氏は自身のブログで、1971年の阪急(現オリックス)との日本シリーズを前に、その年67盗塁をマークしていた福本豊氏対策を、バッテリーぐるみで練った経験を記している。

当時の正捕手である森昌彦氏(のちに祇晶に改名)は、スローイングで球を二塁ベースに当てる練習を繰り返したという。福本氏を刺すには、タッチをしている暇はなく、送球を捕った二塁手のグラブの位置に福本氏の足が入ってくるイメージでないと、間に合わないからだ。

堀内氏も、福本氏が一塁に出ると、しつこく牽制球を放った。しかも2秒、3秒、5秒、0.5秒というように、ボールを持つ時間を変え、重圧をかけた。こうして第1戦の9回、大事な場面で福本氏の二盗を阻止し、シリーズ自体を優位に進めることができたという。このレベルの努力と工夫がなければ、周東を止めることも難しいのかもしれない。

もっとも、盗塁を阻止しようとするより、そもそも出塁させないようにする方が近道だ、とも考えられる。前出の福本氏は、日本記録のシーズン106盗塁を樹立した1972年、打っても打率.301、出塁率.384と手がつけられなかった。周東も成長著しいとはいえ、打率.268、出塁率.323(30日現在)と、まだ当時の福本氏に比べれば、率は高くない。

果たしてどこまで記録を伸ばし、誰がどうやってこの記録を止めるのか? ソフトバンクの優勝は決まったが、盗塁を狙う周東と、そうはさせまいとする相手バッテリーとの駆け引きに注目しても面白い。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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