京都競馬場「また逢う日まで」 ディープ、オルフェ、コントレイル…三冠馬誕生の地 大改修で2年半休止

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 約2年半もの間、レース開催が休止される京都競馬場のスタンド

 数多くの名勝負を生んできた京都競馬場(京都市伏見区)が、11月1日の開催を最後に大規模改修に入る。レース休止期間は異例の2年半に及ぶ。今年は新型コロナウイルスの影響で無観客競馬を強いられ、7カ月半ぶりに入場禁止が解かれたばかり。そんな「淀」の地を訪ねると、しばしの別れを惜しむファンの声であふれていた。

 「競馬を間近で見ると、やっぱり興奮しますね」。GIレースの秋華賞が行われた18日、女性会社員(30)がパドックとスタンドの間を慌ただしく行き来していた。武豊騎手の大ファンで、2年前から全国の競馬場を巡っているという。 

  新型コロナの影響で、日本中央競馬会(JRA)は2月29日から全てのレースを無観客で実施。10月10日に人数を制限して入場を再開した。

 「うずうずした。観客が少なく、熱気がないのは残念だけど、改修前に来られて良かった」と喜んだ。

 場内で飲み物や軽食を販売する島原商店は、1925年に京都競馬場が開設された当初から営業を続ける。入場は再開されたが、1日の売り上げは20分の1に減った。店主の吉田容子さん(59)が思い返すのは、ディープインパクトが三冠を達成した15年前の菊花賞。「13万人を超える人が来場して、場内はファンであふれかえった。コロナさえなければ、今年もあんな一日になったのに」

 25日の菊花賞当日、パドックの人混みの中に会社員近(こん)和明さん(50)がいた。89年に故郷の新潟から龍谷大(伏見区)に進学した。以来、競馬好きが高じて淀暮らしを続ける。

 近さんがパドックで熱い視線を注いでいたのは、出走馬を率いる誘導馬。かつて、場内イベントで触れたのをきっかけに愛着がわいた。特に思いを寄せる芦毛馬ストラディヴァリオは、2003年生まれの大ベテランで、京都競馬場が改修工事に入るのに合わせて園田競馬場(兵庫県)に移籍する。近さんはこの日、菊花賞出走18頭を堂々と誘導する同馬を見守り、心の中で「お疲れさま」とねぎらった。

 11月1日は改修工事前最後のレース開催日。京都競馬場はこの日実施する12レースのうち一つを「栞(しおり)ステークス」と命名した。考案したスタッフは「ファンとの再会の目印に」との思いを込めたという。

 京都競馬場は約2年半に及ぶ改修工事でどう生まれ変わるのか。副場長の重岡真司さんに聞いた。

 -どうして工事が必要なのか。

 JRAの各競馬場で耐震化を進め、最後に残ったのが京都競馬場のスタンドだった。淀の地に競馬場ができたのが1925年。100周年を前に、大規模整備に着手する。

 -何が変わるのか。

 メインスタンドのグランドスワン(地上7階)は、建築基準法改正前の1980年にできた施設で、全面的に建て替える。解体するだけで10カ月を要する大工事だ。馬券購入のキャッシュレス化を進めており、職員が仕事をするバックヤード部分を縮小してお客さんに過ごしてもらうスペースを広く確保する。

 パドックの位置をスタンド寄りにし、馬場との行き来をしやすくする。屋根も設置するので、雨天時も快適に過ごしてもらえるようになる。京都競馬場のパドックはJRAで唯一の円形だったが、これをだ円形にする。残念に思われるかもしれないが、馬が直線的に歩く様子を見てもらえるメリットもある。

 -コース形態は変わるのか。

 直線距離や勾配などを変更することも視野に検討した。だが、京都競馬場は「淀の坂」を含め、元の地形を生かして非常にうまく作られており、ジョッキーとも相談の上、いじるわけにはいかないと判断した。ただ、馬場の路盤改修は大々的に行う。50センチほど掘り返し、土を総入れ替えする。

 -今年は新型コロナの影響を受けた。

 私自身、場内に歓声が響かない現実を受け入れられなかった。限定的とはいえ、ファンの方々に再び競馬の魅力を体感してもらえ、ほっとしている。

 -11月1日の開催を最後にしばしの別れとなる。

 一つの競馬場が2年半もの間、開催を休止するのはJRAにとって初めての経験。よりよい施設に生まれ変わり、皆さまと再会できる日を楽しみにしたい。

 【京都競馬場】天皇賞・春、秋華賞、菊花賞、エリザベス女王杯、マイルチャンピオンシップのGⅠ5競走が行われる国内屈指の競馬場。ルーツは現在の京都リサーチパーク(京都市下京区)周辺にあった島原競馬場で、1908年に第1回京都競馬が開幕。4年後に火事で焼失して京都府須知町(現・京丹波町)に移転した後の25年、現在地に開設された。「淀の坂」と称される第3コーナー付近の高低差が特徴。場内の池は、かつて山城盆地に広がった巨椋池の名残。

菊花賞で疾駆する馬群を観客たちが見つめる(25日午後3時42分、京都市伏見区・京都競馬場)
直線の攻防を写真に収めようとカメラを構える女性
唐揚げを調理する島原商店の吉田さん。人であふれた15年前の菊花賞を懐かしんだ(25日午前11時50分)
パドックを歩く馬をスマートフォンで撮影する近さん(25日午後3時1分)
菊花賞当日の開門直後、入場する観客はまばらだった(25日午前8時52分)
「ファンに喜んでもらえる施設にしたい」と語る京都競馬場副場長の重岡さん
JRAで唯一の円形パドック。大規模改修でだ円形に造り替える