厳冬の予感

 「ラニーニャ」は「女の子」を意味するスペイン語。気象用語では〈太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面の水温が平年より低い状態が続く現象〉を指す。この逆は「エルニーニョ現象」▲この現象によって〈東風が強くなり、インドネシア近海の海上で積乱雲が発生しやすく…〉-と、そこから先の詳しいメカニズムは筆者にはお手上げなのだが、結論だけ書くと、記録的暖冬だった昨冬から一転、どうやらこの冬は寒さが厳しくなるらしい▲経済ニュースのページでは一足早く冷たい風が吹き荒れている。航空、鉄道、流通…さまざまな業種の深刻な業績悪化が伝えられ始めた。普通の感覚では見当もつかない大きな数字が「赤字」の文字と並んでいる▲ウイルス感染の防止と経済活動の両立が難題であることはとっくに分かっていた。人の動きが止まればお金の動きも止まる。そのことが帳簿の冷たい数字と一緒に突き付けられている▲政治が無策だった、とは言わない。しかし「未知のウイルスが相手なのだから、多少の手探りも、方針の揺れも、急ごしらえの不備も仕方ない」といつまでも物分かりのいい話ばかりできない▲行き当たりばったりや右往左往はそろそろ卒業する時期-そんなことも考える冬の入り口だ。きょうから11月。(智)

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