父からの虐待で心も体もぼろぼろに 幻覚幻聴、自殺未遂も 高3女子「私の声聞いてほしかった」

 虐待について考える「子ども虐待防止策イベント」が1日、那覇市内であり、県内の高校3年の女子生徒(18)が父の虐待に苦しんだ経験を語った。暴力や罵声を浴び、中学2年で統合失調症と診断され薬を服用していたという女子生徒は、今は亡き父について「私にしゃべる権利をくれなかった。一回でいいから私の声を聞いてほしかった」と声を詰まらせた。

 虐待は中学に入った頃から始まったという。父の酒癖の悪さが同級生にもうわさされ「負けちゃだめだ」と自分に言い聞かせたが、耐えきれず不登校になった。中2で発作や呼吸困難、幻覚、幻聴が起こり、薬の副作用で拒食と過食、嘔吐(おうと)を繰り返す日々。「心も体もぼろぼろ」(女子生徒)だった。

 唯一の逃げ道だったゲーム機も父に壊された。「全部お前が悪い」。ある日、父が投げ付けた包丁が腕に刺さり出血した。父はすぐ飲みに出掛け、女子生徒はそのまま血のついた包丁を喉に当て初めて自殺を試みようとした。だが母が帰宅し、死ねなかった。

 今でもその記憶を何度も思い返す。「痛かったけど、それよりすごく悲しかった。『お前は殺したくなるほどいらない子だ』と言われているようで」

 両親は昨年春に離婚し、今年5月、父は他界した。なぜぼろぼろになるまで酒を飲み、たばこを吸い続け、暴力を振るったのか。理由は最後まで聞けなかった。女子生徒は父に対し「あなたのことは大嫌いだけど、一番感謝しています。このような人になってはいけないと学ぶことができたから」と語り掛けた。

 イベントは市民有志が企画し、県内の自治体議員も出席した。虐待の取材経験が長いフリーライターの今一生さんが、現状や政府の対策の問題点を説明した。

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