【大学野球】ヤクルト4位の東北福祉大・元山が有終の美 「来年はレギュラーを獲って活躍」

9回に同点本塁打を放った東北福祉大・元山飛優【写真:高橋昌江】

決勝戦で富士大を下し優勝、元山は9回に同点弾、延長10回に決勝犠飛

東北地区大学野球王座決定戦は1日に東北福祉大学野球場で決勝が行われた。東北福祉大(仙台六大学野球連盟優勝)が富士大(北東北大学野球連盟優勝)をタイブレークの延長11回、3-2で下し、優勝した。先月26日のドラフト会議でヤクルトから4位指名された東北福祉大・元山飛優主将(4年、佐久長聖)が9回に同点本塁打、タイブレークの延長11回に決勝犠飛と「ヒーロー」になって、アマチュア野球を締めくくった。

打球がフェンスを越えていることを確認すると、元山は両腕を突き上げ、さらに拳を握って喜びを爆発させた。1点を追う9回の先頭打者。1ボールから投じられた高め直球にバットを振り抜いた。「まさか僕も入ると思っていなかった」。打球はライトフェンス上部に当たって、スタンドイン。相手右翼手がフェンスにぶつかっていたため、「捕られた」とも思った。数ミリずれていれば、打球が跳ね返ってきた可能性もある。球運を味方に試合を振り出しに戻し、「持っていっちゃったかな」とおどけてみせた。タイブレークの延長11回には1死二、三塁で打席が回ってくると、7球粘ってきっちり中犠飛を放った。これが決勝点となり、チームは優勝。「めちゃくちゃ嬉しい」と笑顔が弾けた。

1、2打席目は、富士大の先発・金村尚真投手(2年、岡山学芸館)から三振を喫していた。「インコースのスライダーかカットボールを投げられ続けていた」と元山。3打席目からは「そこで、あえてインコースに立って、アウトステップを踏んだら見やすいんじゃないかと思った」と工夫をかけた。結果は中飛だったが、感触は得ており、同点本塁打、決勝犠飛へとつなげた。

東北福祉大が富士大を下し東北地区大学野球王座決定戦の頂点に立った【写真:高橋昌江】

「打席に向けて集中力をめちゃくちゃ高めた」

ある思いも打球に乗せた。1-1の6回から東北福祉大のマウンドに登ったのは、ヤクルトから2位指名された山野太一投手(4年、高川学園)。前日の八戸学院大戦で先発し、6回3安打12Kと好投。学生野球ラストマウンドだったが、8回裏に勝ち越しを許した。

「山野に負けを付けたらアカンやろ」

9回は3番の元山からはじまる。勝ち越された時点で「打席に向けて集中力をめちゃくちゃ高めた」と神経を研ぎ澄ませていた。「もう、心臓がバクバクしていたんですけど、鼻で思いっきり息を吸って、打席に立ちました」。リーグ戦、全国大会と学生野球で1度も黒星が付いていない左腕を最後に負けさせるわけにはいかなかった。

「小、中、高校と最後の打席は全部、ヒット。大学はホームランで終わりかと思ったんですけど、まさかのもう1打席」と笑いながらも決勝犠飛を放ち、「最後はキャプテンが決めるんかなと思いました」と自画自賛。黒星を帳消しにしてもらった山野は「叫びました。いや、もう、カッコよかったです。練習に早く来て、バッティング練習とかをしているのはチームのみんなが知っている。その成果が出たと思います」と称えた。

新型コロナウイルスの影響で今年の公式戦は秋季リーグ戦10試合と今大会の2試合のみとなったが、1度も負けることなく有終の美を飾った。「大学に入って一番、熱い試合を富士大とできたので最高の日でした」と元山。前日の守備で「2年ぶりくらい」にエラーし、この日も握りが浅くて送球ミスを記録。その点は反省しつつ、「来年からしっかりレギュラーを取って、活躍できるように頑張ります」と新たなステージに気持ちを向けた。(高橋昌江 / Masae Takahashi)

© 株式会社Creative2