<いまを生きる 長崎コロナ禍>長崎県難病連がオンライン講演会 新たな交流の場 患者生活のリアル伝える

 NPO法人長崎県難病連絡協議会(野口豊理事長)は10月25日、「好きなものを食べて生きていく」をテーマに摂食嚥下(えんげ)障害に関する医療講演会をオンライン形式で開いた。長崎市の難病患者の自宅から、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」でライブ配信し、県内外の約70人が視聴した。
 新型コロナウイルスの感染拡大により集会が制限される中、新たな交流の場を模索してきた。今回はネットを活用することにより、遠くは関東、北陸、海外からも参加があった。「多くの人とつながることができた。暗い話が多いコロナ禍の中で見つけられた光明」と関係者は話している。
 県国保・健康増進課によると、県内の難病患者会によるオンライン講演会は初めて。難病「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症」の患者・家族会「アジサイ会」事務局を務める小川志穂さん(61)が「患者生活のリアルを伝えたい」として、自宅を会場として提供。同病患者で夫の久法さん(66)の検査場面を交え、長崎大学病院の三串伸哉准教授が摂食嚥下障害の特徴や改善方法について解説した。
 久法さんの病は、歩行時のふらつきや、ろれつが回らないなどの運動失調を示す神経難病。6、7年前から車いす生活となり、食事ものみ込みやすいよう「とろみ食」で摂取している。
 講演会では、食べ物をのみ下す際の口腔(こうくう)から食道の動きを内視鏡の映像を使って紹介。そのモデルを務めた久法さんは好物のカキフライや酒盗などを口にして、「至福の表情」(志穂さん)を浮かべていた。
 コロナ禍は患者、家族の生活にも影響を及ぼしているという。小川さん宅では、久法さんと同じ病の長男、法正さん(37)の介護もしている。以前は季節の花や夕日を見ようと出掛けていたが、感染対策で法正さんは外出できなくなり、ストレスがたまりがちという。
 難病患者は数が少なく、悩みを打ち明け、共感してもらえる“仲間”と出会う機会がもともと限られている。「コロナ禍でさらに孤独感を深めている人は少なくない」と志穂さん。今回のオンライン講演会について「会場で聴くのに比べれば、遠く感じられるのは否めない。ぬくもりを感じられる会にすることで、その距離感を縮めたかった」と自宅を会場とした狙いを明かした。
 県内ではコロナ禍以前から、離島の患者、家族は本土地区の行事に参加しにくいという課題もあった。「今回の講演会を機に、他の難病などでも参加者が家にいながらにして語り合う場が増えていけば」と志穂さんは期待している。

内視鏡で喉の中の様子を映しながら、嚥下の仕組みを解説する三串准教授(右)=長崎市内

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