『おらおらでひとりいぐも』1人の老後が楽しみになる!

(C)2020「おらおらでひとりいぐも」製作委員会

 63歳で作家デビューした若竹千佐子が第158回芥川賞と第54回文藝賞をダブル受賞したデビュー作を、『横道世之介』『モヒカン故郷にる』の沖田修一が田中裕子主演で映画化。75歳になった桃子さんを田中、若き日の桃子さんを蒼井優、夫の周造を東出昌大が演じているほか、濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎という個性的なキャストが桃子さんの“心の声”をユーモラスに演じています。

 タイトルの「おらおらでひとりいぐも」とは宮沢賢治の詩に出てくる一節で、「1人で生きていく覚悟」のような意味をもつ東北弁です。 田中が演じる75歳の桃子さんは、長年主婦として家族に尽くす人生を送ってきました。そんな桃子さんは、ある日、夫に先立たれ、1人での日々を送ることになりますが、脳内では常に彼女の“心の声”が故郷の東北弁で自らの思いを深掘りする会議をします。自分の人生を振り返りながら、桃子さんがはたと気付くのは「なんだかんだで、旦那が亡くなってから今の私一番自由じゃん!」ってこと。だんだんと前向きになっていく桃子さんを見ていると私も老後が楽しみになってきました。大事なのは1人でも寂しさを受け入れてマイペースに1人で生きるってことなんだな、と。母としても娘としても感じるのは、「子供のために生きる」ってのは結局お母さんを縛り付ける呪文で、お母さんを卒業した後は自由になれればいいよなあって、肩の力がすっと抜ける映画です。★★★★☆(森田真帆)

 

11月6日から全国公開

監督:沖田修一

出演:田中裕子、蒼井優

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