九州森林管理局長 小島孝文氏 インタビュー 育てた資源の活用 重要

「九州は日本の林業のトップランナー。林業関係者と連携して取り組みを進めたい」と話す小島局長=長崎新聞社

 九州や長崎県の森林、林業の現状はどうなっているのか。林野庁九州森林管理局の小島孝文局長(58)に聞いた。
 -九州森林管理局の業務概要は。
 九州・沖縄の森林280万ヘクタールの約2割に当たる国有林など約54万ヘクタールを管理経営している。国土の保全、水源の涵養(かんよう)、野生生物の生息環境の保全、木材の安定供給など公益的な役割を重視する管理経営をしている。島原の眉山で取り組んでいるような地域の安心安全を確保するための治山事業、屋久島や奄美、西表など貴重な自然環境の保全、森林空間のレクリエーション利用などを通して、国民の森として地域振興に寄与する事業に取り組んでいる。
 -九州の林業の現状は。
 九州は気候が温暖で雨も多いので木の成長に非常に適している。南部は主にスギ、北部はスギとヒノキ。九州は日本の中でも成長が旺盛な地域で宮崎はスギの生産量日本一。昔から都城や日田は製材所があり、日本の林業、木材産業をけん引している。戦後の拡大造林で植えたスギ、ヒノキが50~60年たって利用期を迎えている。旺盛な木材資源を背景に九州各地に大型の製材工場、合板工場ができて供給量も増えている。
 -長崎の林業の現状は。
 長崎県の面積の約6割、約24万ヘクタールが森林。このうち民有、国有を合わせて10万ヘクタールが人工林。宮崎、大分、熊本に比べて長崎は林業県ではないが、育てた森林資源を活用することは重要。特に対馬は対馬ヒノキが有名で韓国に輸出している。地域で循環する産業構造を作って山を管理し、雇用を確保することが大切だ。民有林は小規模所有者が多いので隣接する国有林と一体となって施業し、作業道や林道を合理的な線形にする取り組みもしている。
 -大雨や台風で土砂崩れや山崩れが起きている。
 人工林は大きく成長し、地球温暖化対策の京都議定書対応でこの10年間、間伐を集中的にやってきた。山の整備が進み、個人的には森林の保水量は高くなっていると思う。雨の降り方が昔に比べ強くなった。山の保水能力の限界を超えた雨が降ると崩れてしまう。
 -所有者が分からない森林はどう対策をしているか。
 地籍調査で登記簿上の所有者不明森林は約3割。森林がある市町村に住んでいない所有者も増えている。森林経営管理法を作り、市町村が所有者に意向調査をして、林業をやる意思があれば森林組合や林業者を紹介して経営委託を促す。作業道ができないとか、急傾斜地で林業に適さない場所は自治体が森林環境譲与税を活用して災害が起きないよう天然林に戻していく。

 【略歴】こじま・たかふみ 1962年生まれ。神奈川県出身。東京大農学部林学科卒。87年に林野庁入庁。熊本営林局屋久島営林署長、林野庁林政部木材産業課長、森林整備部整備課長などを歴任。前職は東北森林管理局長。2020年4月から現職。趣味は野球。

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