【気になる一言】「我々の旅はまだ終わっていない」メルセデスF1代表、ハミルトン引退の可能性に否定的

 第13戦エミリア・ロマーニャGPのレース後にメルセデスが開いたトト・ウォルフ代表の会見では、コンストラクターズ選手権7連覇に関する質問のほかに、ある疑問に関する質問が相次いだ。それは、直前に行われたFIAの会見でルイス・ハミルトン(メルセデス)が語った「僕だって、来年ここにいるかどうかさえわからない」というコメントについての質問だった。

 ウォルフは「彼が今シーズン限りでF1を引退する? 私はそうはならないと思う」と語った後、こう続けた。

「というか、そんなことが起きないことを願いたい。もしそうすれば、かなりの混乱が起きるだろう」

 では、なぜハミルトンは今シーズン限りでの引退をほのめかすような発言をしたのだろうか。ウォルフは次のように推察した。

「レース後というのは、気持ちがたかぶっている。歓喜に包まれながら、同時に疲労感にも襲われている。それはルイスだけでなく、我々みんなが経験しているよくある混乱だ。スイッチが入っているときには感じることはないが、スイッチを切ると襲われる。そして、スイッチをつけたままでいることはできない」

 ウォルフは優勝し、連覇を続けることが、みんなが想像している以上に精神的にタフだということを説明した。

「我々は今日、歓喜のなかにいる。そしてみんな、それぞれの家へ帰り、喜びを分かち合うことだろう。しかし、翌日には厳しい戦いが待っているという現実に戻らなければならない。だから、その狭間で感情が揺れ動くことは私には想像できるし、よくあることだ」

2020年F1第13戦エミリア・ロマーニャGP ルイス・ハミルトン&バルテリ・ボッタス(メルセデス)

 そのうえで、ウォルフは最終的に再びチームは同じ方向へ歩み出すだろうと語った。

「我々は共に進む。このチームは私のチームだ。メルセデスは私の誇りだ。私はほかのどこかへ行くことはない」

 そして、ハミルトンの発言をあまり深刻に考えない方がいいと笑った。

「彼の発言は、私が今後、役職が変わる可能性があるかもしれないことに関して発せられたことを忘れないでほしい。ニキ・ラウダだって、1970年代に、ある日『もうF1が楽しくない』と語ったことがあったじゃないか。そういうことは誰にでもある」

「だからといって、我々がこの旅を終わらせることはない。我々の旅はまだ終わっていない。ルイスと私、そして私のチームのすべてのスタッフとの旅はまだ続く」

 ウォルフの言う通り、ハミルトンの発言はレース後の感傷的な瞬間で発せられた深意ではない言葉だったのか。それとも、通常の状態なら発することがない底意だったのか。それは、いまは誰にもわからない。

2020年F1第13戦エミリア・ロマーニャGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

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