成果を上げながら定時で帰る仕事術 第74回 「脱ハンコ」をきっかけにしてワークフローを総点検しよう

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本連載のでは「『脱ハンコ』を実現してもテレワークができるとは限らない」と題し、脱ハンコを着実にテレワークにつなげるためのステップをお伝えしました。今回も引き続き脱ハンコに着目し、せっかく脱ハンコに取り組むのであれば、それをきっかけにしてワークフローを見直しませんか、というお話をします。

今、多くの企業で脱ハンコの検討を進めているようです。脱ハンコをテレワーク導入の手段として捉えている企業もあれば、業務効率化と生産性向上のための手段として捉えている企業もあるでしょう。

しかしながら目的を問わず、脱ハンコを進めるのであればこれを機に社内のワークフローを見直してみてはいかがでしょうか。

ワークフローとは企業間、或いは人の間での情報と業務のやり取りの一連の流れのことです。部下が上司に申請して上司が承認或いは却下する申請承認プロセスなどが該当します。

紙の資料への押印はワークフローを構成する作業の一部であることが多いため、脱ハンコを進めることは意図するかしないかに関わらず、ワークフローに影響することは避けられないでしょう。それならばいっそのこと、脱ハンコの検討を機にワークフローそのものを見直して効率化してしまえば一石二鳥です。

そもそもワークフローには多くの改善機会が潜んでいる場合があります。ここではよくある7つの改善機会を説明します。

1. 決裁階層が過剰に多い

会議終了後、担当者が作成した議事録を印刷して係長に確認して押印してもらい、それを持って課長、さらには部長へと回して押印してもらってから関係者に配布しているというような場合には、決裁階層が過剰に多いと言わざるを得ません。これでは押印をもらうのに手間取っている間に時間が経過して、会議での意思決定内容や議論の内容を関係者に共有するまでに無駄に時間がかかってしまいます。

このケースでは、もし担当者が議事録の作成に不慣れな場合であったとしても、よほど経営の根幹にかかわるような重大な内容でなければ係長が内容を確認して問題がなければ配布、という流れで十分でしょう。それでは心配になるような重大な内容の場合には係長自らが作成して配布すれば迅速性と正確性を担保できます。いずれにせよ過剰な決裁階層を廃止することで迅速な情報共有と会議での決定事項の遂行を実現できるでしょう。

2. 決裁権限や承認プロセスが曖昧

文書に明記されていないためになんとなくいつも上司に決裁を仰いでいるが本当のところそれでよいか分からない、複雑な条件次第で決裁権限が異なるので誰の承認をもらったらよいか分からない、といったケースがあれば改善の余地があります。

特に重要な意思決定を伴うものであれば、申請承認ルールを文書に記載しておき、決裁権限の条件もあまりに複雑なものは見直して極力シンプルにすることで、ワークフローが滞りなく流れるようにしましょう。

3. 形式的な申請・承認業務を行っている

日常的に頻発する申請・承認業務にありがちなのが、中身をよく精査しないで承認する形式的なものになってしまうことです。一応、ルールだからということで決裁者に申請書類が届くと押印してはいるものの、内容を確認していないので実質的に形骸化していると言わざるを得ません。

こうしたケースでは状況によって対応が2パターンに分かれます。1つ目のパターンは、その決裁業務が会社や顧客、取引先、従業員などの利害に多大な影響を及ぼしかねないような重大なものの場合です。そのようなものであれば、形式的に押印していること自体が問題なので決裁を軽視することの危険性を決裁者に説明して理解させることが必要です。そして2つ目のパターンは形式的であっても問題にならないような、重要でない決裁業務だった場合です。この場合には思い切ってその決裁業務そのものをなくすことを検討するとよいでしょう。

4. 決裁者の不在で承認プロセスが遅れる

紙を使った申請承認フローでよくあるのが、決裁者が外回りや出張などでハンコを押せないために申請内容の承認が遅れてしまうということです。申請内容によっては意思決定が遅れてしまい、ひいては損失を生むことさえありえます。

このような事態を避ける方法としては決裁者に代理人を立てて押印してもらうのが一般的でしょうが、代理人がその決裁に責任を持てるほど申請内容に熟知しているとは限りません。そのため、メールやチャットなどのオンラインのツールで、かつ証跡が残る方法で決裁してもらうように変更するのが妥当でしょう。もちろん遠隔地からでも使用可能なオンラインのワークフローシステムの導入でも対応できます。

5. 申請フォームが部署や人によって異なる

これは申請用のフォームを印刷する際に、自分のPCに保存してあるフォームを用いている場合によく起こります。会社の正式なフォームがあったとしても、以前から自分が使っている慣れた申請フォームを印刷して提出する人がいたり、特定の部署の中だけで脈々と受け継がれている申請フォームが使われているような場合には要注意です。

申請フォームが異なると、同じ種類の申請内容にも関わらず情報に過不足が生じたり、過去の決裁内容との比較が困難になったりするなどの弊害が生じます。また、決裁者にとっても異なるフォームで申請が届くことは内容の確認時に混乱を招きかねません。

申請フォームは会社として正式なものを作成・周知徹底し、それ以外のものは一切認めないという強力なメッセージを伝えるべきでしょう。

6. 決裁の進捗が把握できない

特に決裁階層が多く時間がかかるような場合で、かつ急ぎの案件の場合にはどこまで決裁が進んでいるのかを把握する必要が出てくるでしょう。そのような場合に、紙の資料ではリアルタイムで進捗を確認することが困難です。そのため決裁者に逐一聞いて回らなければならず、急ぎであれば今ボールを持っている決裁者に優先的に決裁してもらうよう働きかけなければなりません。

決裁の進捗を確認するのは、紙を扱っている以上は困難でしょうが、メールやチャットで代替したとしても解決できるわけではありません。進捗の管理をするためには、オンラインでの専用のワークフローシステムを導入するのがお勧めです。それによって今、誰がボールを持っているのかがリアルタイムに把握できるため、急ぎの場合にも迅速な対応が可能になります。

7. 過去の決裁の履歴が追えない

決裁者が申請内容を吟味する際に、過去にも似たような案件があった場合には決裁内容やその理由を参考にしたいということがあるかもしれません。しかし、申請フォームが紙の場合にはファイルに綴じられた大量の申請用の紙資料を一枚一枚めくって探す手間を考えると、該当する案件の情報を探し出すのが現実的ではないという場合もあるでしょう。

このような場合にはやはり申請フォームを電子化してやり取りした上で共有フォルダに格納するか、或いは履歴のデータを蓄積し、後から検索できるワークフローシステムを導入することで対応できるでしょう。

会社の業務において、押印とワークフローは切っても切れない関係にあります。そして「脱ハンコ」を進める以上はほぼ確実にワークフローにも手を付けることになるでしょう。その際に、既存のワークフローありきでただ紙を電子化するのではなく、ワークフローの在り方そのものをゼロベースで問い直すことで業務効率化につながる可能性があります。本稿の内容がそのための参考になれば幸いです。

相原秀哉

あいはらひでや