原因は脳疲労?仕事の“やる気スイッチ”を入れる「4つの方法」

「仕事がなかなかはじめられません」「机には向かったものの、勉強が始められません」と悩む人は非常に多いです。机に向かってダラダラと時間がすぎてしまうことは、誰しも経験があるでしょう。その乗り越え方を、前回・前々回に引き続き、精神科医の樺沢紫苑さんの著書『ストレスフリー超大全 人生のあらゆる「悩み・不安・疲れ」をなくすためのリスト』から抜粋して紹介します。


ファクト1 みんな誰しも「はじめられない」

やる気の「スイッチ」をポチッと押して瞬時に仕事や勉強をスタートできれば、どんなに楽でしょうか。実は、脳に「やる気のスイッチ」があります。しかし、脳の「やる気のスイッチ」を、「オン」にするには少し時間がかかるのです。

脳の「やる気のスイッチ」は、「側坐核」という部分にあります。「側坐核」に「ある程度の強さ」の刺激を与えると活動をはじめ、「やる気物質」であるドーパミンの分泌が促され、そこから「やる気」が湧いてきます。

では、「側坐核」を興奮させるにはどうしたらいいのでしょう。それは、仕事(勉強)をはじめることです。そう言うと、「いやいや、仕事(勉強)をはじめる方法を知りたいのに、おかしいだろう」と反論がきそうです。

しかし、「側坐核は即座に興奮しない」のが脳の仕組みなのです。何か簡単な作業でいいので、脳を使いはじめて軽く興奮させると、自動車の暖機運転のように、脳が少しずつ温まってきて、5 分ほどすると、ようやく「本気」を出しはじめるのです。

ToDo1 パワーポーズで脳をダマす

おすすめの方法は、仁王立ちになってから、両手を上にあげてガッツポーズをし、「今から仕事をはじめるぞ。うぉー!」と叫んでください。大声で絶叫するほど効果があります。実際にやってみればわかりますが、絶叫すると勝手にテンションが上がり、やる気が出てきます。

これは、世界ナンバーワンのカリスマコーチのアンソニー・ロビンズもよく使う手法です。大声で叫ぶことによってアドレナリンが分泌されます。アドレナリンが脳を覚醒増強するのです。

ボディランゲージの研究者であるハーバード大学のアミィ・カディ教授は、パワーポーズをとるだけで、テストステロンが増加し、ストレスホルモンが低下し、やる気がアップすると報告しています。テストステロンは、やる気、意欲、チャレンジに関連したホルモンです。

大声を出せない場合は、パワーポーズを 1 分間とるだけでも、やる気アップの効果が得られます。

「認知的不協和音」で、やる気を出す

ToDo2 宣言する

会社などで大声を出せない場合は、小さい声でいいので、「今から仕事をはじめるぞ」と声に出して宣言してください。この「宣言」が、ものすごい効果をもたらします。

これは、心理学の「認知的不協和」を応用したテクニックです。「認知的不協和」とは、アメリカの心理学者のフェスティンガーにより提唱された概念で、矛盾する 2つの認知が存在する場合、そこに違和感やストレスを感じ、認知の矛盾を解消しようとしたくなる心理のことです。

「今から仕事をはじめる」と言った自分と「まだ仕事をはじめていない自分」は、矛盾しています。「言ったことを取り消す」か「仕事をスタートする」かしない限り、矛盾は解消しません。「言ったことを取り消す」のは難しいので、仕事をスタートせざるを得なくなるのです。紙に書いてあることを現実にしようとする行動をとってしまうのです。

トイレでよく見かける「トイレをきれいに使っていただきありがとうございます」という張り紙も、認知的不協和を根拠としています。

宣言は何度しても OK です。もしくは、紙などに大きく「今から仕事をはじめる」と書いて机の前に貼るのも効果的です。書いた内容を声に出して読めば、脳は「そろそろはじめないといけないな」と思いはじめるはずです。

ToDo3 何でもいいからはじめてみる

それでも、仕事や勉強をはじめられない人もいるはずです。その場合、本来するべき仕事や勉強にいきなり取り組むからハードルが高くなってしまい、脳が拒絶反応を起こすのです。

まずすべきことは、とにかく「何か」をはじめてみること。次の6つのリストを参考に、手っ取り早くできそうなことからはじめてみてください。すぐにやる気が出てくることでしょう。

(1)計画を立てる
1日の最初に、「ToDoリスト」を書くことからスタートしよう。午後や夜の場合は、「今から1時間でやること」など、時間を区切った「ToDo」や「目標設定」をすると、それだけでやる気物質のドーパミンが分泌する。

(2)何かを書く
「手書き」で書くことが重要。脳を活性化して、側坐核が興奮モードに入る。「見る」だけだと脳を活性化しないので、とにかく書く、あるいはパソコンに「入力」して手先を動かそう。メール3通を返信すれば、「やる気モード」にスイッチが入る。

(3)テンションを上げる音楽を聴く
仕事中に音楽を聴くと仕事のパフォーマンスが下がると、多くの研究が示している。とはいえ、仕事の開始前に、自分の好きな曲、テンポの良い曲、ノリノリの曲を聴いて、テンションを上げるのは効果がある。1曲終わった瞬間に、仕事(勉強)をスタートさせることが大事。

(4)スマホ、ネットを切る
テキサス大学の研究では、スマホが机の上に載っているだけで、集中力などの認知機能やテストの成績を低下させることがわかっている。スマホのスイッチを切ってカバンの中に仕舞ったり、隣の部屋に置いたり、ロッカーに仕舞おう。パソコンにしても、Wi-Fiをオフにするなど、ネットとの接続を切るといい。

(5)仕事(勉強)しているふりをする
作業しなくてもいいので、机に向かってパソコンや本を開いて、仕事(勉強)しているふりをしよう。やる気が出ていなくても、とりあえず机に座って、体の態勢だけでも開始に備えます。「ふり」も5分続ければ、次第に「やる気モード」に切り替わる。

(6)自分なりのルーティンを作る
以上の5つを組み合わせ、「自分なりのルーティン」を作る。毎日、同じパターン、同じ儀式をすることで、ムダなくスムースに仕事(勉強)をはじめることができる。

それでも、やる気が出ないときの「最終手段」

ToDo4 最終手段は「睡眠」しかない

「ToDoリスト」を書けない、「メールの返信」ができない、「仕事をしているふり」すらできない。つまり、「まったく仕事が手につかない」状態とするならば、それはかなりの脳疲労です。場合によっては、「うつ病」の一歩手前の状態かもしれません。

睡眠不足、運動不足、過度のストレスなどを溜めている、どれかに当てはまるはずです。まずは睡眠を 6 時間以上とる。ストレスを減らす努力する。週に 150 分以上の運動をするなど、生活習慣を見直すべきです。

睡眠は、脳の疲労を回復します。睡眠が足りないと、脳は疲労を蓄積します。その結果、やる気や集中力が下がり、フルパワーを出せないようになります。睡眠不足や脳疲労の状態で、「やる気」が満タンになることはありえません。

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