2019年、解任された米マクドナルドCEO、退職金のゆくえは?

 ファストフード大手の米マクドナルドは2019年11月3日、スティーブ・イースターブルック社長兼最高経営責任者(CEO)が、部下と恋愛関係を持ったため解任したと発表した。合意の上の関係でも解任された敏腕元CEOの今回のニュースを巡り、現在の米企業各社のコンプライアンス重視の気運が見てとれる。

株価を2倍に上げたCEOでも厳しい処置

 ファストフード大手の米マクドナルドは2019年11月3日、スティーブ・イースターブルック社長兼最高経営責任者(CEO)が、部下と恋愛関係を持ったため解雇したと発表した。同社は「2人が関係を持ったのは合意のもとだった」と説明したが、それは同社の社則に触れることであり、トップとしての「判断力に欠けている」ことを示したと述べた。

 イースターブルック氏はイギリス人で52歳、英オックスフォード大学客員研究員にも名を連ね、妻とは最近になって離婚しているため現在は独身だ。同氏は全社員宛ての電子メールで事実を認めた上で、関係を持ったことは過ちだったと伝え、「マクドナルドの価値基準に基づき、自分は次の場所へと動く時期だという役員会の判断に合意した」と書いたという。

 1993年にロンドンの財務担当マネジャーとしてマクドナルドに入り、頭角を見せて昇進したが、2011年に退職。イギリスの有名飲食店チェーンなどで社長を務めた後、2013年にマクドナルドに復帰し、2015年に社長兼CEOに就任。それ以降、メニューや店舗の改革、Uber Eatsなどと組んだデリバリーサービスやモバイル決済などを導入し、同社の株価は2倍以上に上昇した。

高給取りだった同氏が受け取る退職金は?

 同社への貢献が大きく評価されているイースターブルック氏だが、同氏は高給取りとして知られていた。2017年の年収は21.8ミリオンドル(日本円で約24億円)、2018年の年収は15.9ミリオンドル(約17億円)で、同社の一般的な従業員の平均年収7,500ドル(約80万円)の2,000倍以上の報酬だと批判の対象にもなっていた。

 同氏の退職に際しては、2年間はマクドナルドの競争相手となりうるコンビニやコーヒーショップを含むいかなる飲食業にも就いてならないという規定があるため、26週間分の退職金が用意されることになっている。今回は社内規約に違反した理由の解任であるため、退職金が減額される可能性もあるが、同氏は米大手量販店ウォルマートの取締役も勤めているため、飲食業界で2年間働けなくとも生活に困ることはないだろう。

 同氏の後任には、これまでマクドナルドUSA社長を務めていたクリス・ケンプチンスキー氏が就任した。

「#Me Too」ムーブメント以降の大きな変化

 アメリカでは2018年、インテルのブライアン・クルザニッチCEO(当時)が、従業員と合意の下で恋愛的な関係となり、社則に違反したとして解雇されている。

 米国の法律家や社内規約の専門家たちは、「#Me Too」ムーブメント以降、多くの米企業が従来よりも社内恋愛などの社則の管理に重きを置いていると話している。この動きは今後、ますます強化されていきそうだ。

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