残り2戦で異例の事態。平川&山下のKeePerトムスGRスープラはもてぎをどう戦うのか

 スーパーGT第6戦鈴鹿終了時点でドライバーズランキング2位のKeePer TOM’S GR Supra。タイトル争いが佳境に入るなか、スーパーGTだけでなく国内レースファンにとって驚きとなったキャシディの急きょのドライバー交代。

 キャシディがフォーミュラE参戦準備のため、スーパーGT最後の2戦を欠場することとなり、代わりに2019年のGT500クラスチャンピオンの山下健太がステアリングを握ることとなったが、シーズン残り2戦でチャンピオン候補のチームがドライバー変更を行うという異例の事態にKeePer TOM’S GR Supraのドライバー陣、そして山田淳監督に話を聞いた。

 11月6日の搬入日にツインリンクもてぎに到着した山下に、今週末に向けた意気込みを尋ねると「足を引っ張らないように頑張ります」と今の心境を話した。

「正式にオファーを頂いたのは2週間くらい前です。連絡が来たときは『来たか』という感じでした」

「今年もGT500に乗れるチャンスがあれば乗りたいと常に思っていました。ただ、ずいぶんと重要な場面でお話を頂いたので、よかったなというよりも、頑張らなきゃいけないなという感じです」

 シリーズタイトルがかかった残り2戦での代役参戦という、自分を信頼し大きな責任が伴うオファーをくれたチームへ感謝の気持ちを表しつつ、第7戦もてぎへの意気込みを語る山下。

 2020年はWEC世界耐久選手権とスーパーフォーミュラを主戦場としているが、スーパーGT第1戦でヘイキ・コバライネンの代役としてGRスープラをドライブしており、代役としてはこれ以上ない存在だ。

 しかし、「GT500には第1戦富士以来乗っていないので、そこはちょっと不安ですね」と、4カ月ぶりのGT500ドライブに若干の不安も感じている様子。

「2クラス混走のレースも久しぶりなのでちょっとだけ不安の方が大きいですが……大丈夫かなと。チームと平川選手がチャンピオンを獲れるように走らないといけないと思います」

 ちなみに、これまで同年代(1歳違い)で同じトヨタ陣営として戦ってきた山下と平川だが、実はふたりの接点は多くない。

「野球を一緒にしたことがあるくらいですかね。あとはスーパー耐久で一緒のチームで走ったことがあります」と話す山下。そのスーパー耐久、昨年の富士24時間では、山下は1コーナーで大クラッシュしている、苦い思い出のレースでもある。

 シリーズタイトルがかかったなかでの代役参戦という大きなミッションを課せられた山下。ファンも含め周囲からの大きな期待を背負ってどのような走りを見せるのか、当然、第7戦もてぎ大会の注目ポイントとなる。

■37号車 山田淳監督「次のステップに向かっていくのがニックにとって一番いいのではないかと思います」

 一方、ニック・キャシディの残り2戦欠場という苦渋の決断を下したKeePer TOM’S GR Supraの山田淳監督は「本当に苦渋の決断でした。シーズン途中にドライバーを変えるというのはあまりやりたくないのが実際のところなんですけど、まあ、それもニックの将来のことを考えると……致し方ないのかなと」と、キャシディのキャリアを尊重した難しい判断だったことを説明する。

「個人的には、やはりニックとの付き合いも長くて、ずっと彼のことを見てきたので、非常に寂しい週末だなというのが率直な意見ですね」

「2014年の冬のテストで彼を選んで、2015年シーズンから全日本F3選手権に参戦して、そのあともずっとトムスで乗ってくれていたので非常に残念なのですが、その半面、日本ではスーパーGT、スーパーフォーミュラという国内のトップカテゴリーと呼ばれるところは制覇したので、やはり次のステップに向かっていくのが彼にとって一番いいのではないかと思います」と山田淳監督。

 キャシディの代役として起用した山下については、大きな期待を話した。

「山下選手はポテンシャルの高いドライバーで、ニックと一緒にウチで全日本F3を戦っているときも、ほぼ互角の勝負でした。F3を卒業してからも上のカテゴリーで活躍していて、去年はGTのチャンピオンですしね。山下選手とは久しぶりの仕事になるんですけど、どこまで成長しているのかというところも楽しみですし、もてぎは彼が一番得意としているサーキットでしょうから、そういう意味ではものすごく期待をしています」

 そんな期待と不安を背負う山下を、新たなパートナーとして迎えることとなった平川亮。もてぎの搬入日で山下の印象と今週末の抱負を聞く。

「彼は彼でプレッシャーに感じているでしょうね。別に彼が失敗したから何かってこともないですし、思いきってやってくれれば全然いいと思います」と、先輩の平川。GT500クラスで近年チャンピオンに輝いたふたりが組むとあって周囲の期待と注目度は高まるばかりだが、毎年タイトル争いをしている平川にはある種の余裕が感じられる。

 なお、山下はかつて平川と野球をしたことがあると語っていたが、平川に確認したところ「野球? いや……ないと思います。最後に野球をやったのは小学校のときですね」とのこと。真相は謎に包まれたままである……。

 第6戦終了時点でドライバーズランキング2位の平川亮、チームランキングは5位のKeePer TOM’S GR Supraにとって、キャシディの離脱、そして山下の参戦は残り2戦を戦う上でどのような影響を与えるのだろうか。

 2020スーパーGT第7戦『FUJIMAKI GROUP MOTEGI GT 300km RACE』は11月7日13時30分から公式予選が、11月8日13時から63周の決勝レースが行われる。

第7戦もてぎ 搬入日のKeePer TOM’S GR Supra

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