体罰の懲戒処分取り消し 横浜市教委「判断誤った認識ない」 取り消しは「遺憾」

男性教諭の懲戒処分取り消しが報告された横浜市教育委員会の定例会=横浜市役所

 児童に体罰をしたとして横浜市教育委員会が40代男性教諭に科した懲戒処分を市人事委員会が取り消したことを巡り、市教委は6日、調査が不十分で処分が覆ったと正式に公表した。鯉渕信也教育長は「市教委の主張が認められず遺憾。人事委の裁決を踏まえ適切に対処する」とのコメントを出した。処分取り消しは過去に例がないという。

 教諭は2016年2月、市立立小学校6年の理科の授業中に男子児童の胸ぐらをつかんで「内申を下げるぞ」などと叱しっ責せきしたとして、同8月に戒告処分となった。しかし、「丁寧な言葉遣いで指導した」などとして処分取り消しを求める審査請求を人事委に提出。人事委は市教委の調査結果について「体罰を認めるに足りる証拠を提示していない」などと結論付け、今年10月28日付で処分を取り消した。

 人事委の裁決で体罰の事実認定がされなかったことについて、市教委は「調査が不十分だったという裁決であり、体罰があったという判断が誤っていたとの認識はない」と主張。現時点で再調査の予定はないとした上で、再発防止に向け「同様のケースがあれば事実確認をより慎重に進めていく」とした。

 処分取り消しから公表まで9日間を要したことについては、「(被害に遭ったとされた)児童や保護者への影響もあると考えた」と説明。人事委が調査に要した4年間の昇給抑制にも触れ、「教諭への支払額を計算する必要があった」と述べた。一方、教諭側の弁護士費用については「負担しない」とした。

 公表に先立ち開かれた市教委定例会では、委員から「当該の子どもや保護者が体罰を受けたと感じた事実を重く受け止めてほしい」などとする意見が上がった。

© 株式会社神奈川新聞社