銭湯の火、残し続ける 30歳で4軒の経営「次の5年で50軒」へ突き進む 京都「ゆとなみ社」湊三次郎さん

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京滋で4軒の銭湯を経営している「ゆとなみ社」代表の湊さん。現在、全国各地の銭湯とも交渉を進めている(京都市下京区・サウナの梅湯)

 2015年5月、京都市下京区の「サウナの梅湯」を引き継いでから5年。湊三次郎さん(30)が経営する銭湯の数は京滋4軒に増えた。まちを温かく沸かす湯の火を消さぬという思いは、一層強くなっている。

 京で過ごした大学時代。見知らぬ人と風呂に入り、仲良くなる心地よさに気づき、銭湯にのめり込んだ。サークル活動も卒論も、銭湯一色になった。現在、廃業しそうな銭湯の経営を引き継ぐ団体「ゆとなみ社」の代表として20人のスタッフを束ねる。「ゆとなみ」とは人々と湯の営みを掛けて名付けた。

 各銭湯では、個性豊かなスタッフがイベントなどを企画し盛り上げている。だが、最も力を入れているのは誠実な接客だ。「新規の地元住民や若いカップルが常連になってくれる。まだまだ続けられる」と手応えを感じている。

 「日本から銭湯を消さない」という思いは、SNS(会員制交流サイト)でも積極的に発信し、ツイッターのフォロワーは約1万人に及ぶ。

 原動力は、銭湯が取り壊されると情景が一変し、心の豊かさも失われるのではないかという懸念だ。「まちにはいろんな人が住み、商店があり、銭湯で出会える。マナーで怒られたり、会話を楽しんだりできる。真の豊かさだと思う」

 一方、経営継承の交渉は一筋縄ではいかない。相続の問題や家賃設定、銭湯の持ち主と条件が折り合わない場合も多く、20軒は断られた。ようやく交渉成立しても「経営に乗せられるか、一気に重圧がかかる。ゴールのないマラソンの始まり。顔をたたいて気合入れます」。

 今年は新型コロナウイルスの影響も受けた。人数制限や完全休業し、利用客も一時急減した。だが、「厳しいからこそ守らなければと、意志はより明確になった」と前を向く。

 最近は、自分のように銭湯を引き継ぎたいと考えている人を増やしたいという。直接会って相談に乗り、蓄積してきたノウハウや経営の苦労を包み隠さず伝えている。

 次の5年に向けて「突き進む。50軒継ぎたい」。ちなみに、「ゆとなみ」を反対から読むと-。「引き継ぐ銭湯の屋号は残すので、せめてここに自分の名前を入れたかった」と、はにかんだ。

火にまきをくべ、湯を沸かす湊さん。まちの銭湯の火も絶やさぬと意志は強い