FIA-F4:もてぎ大会も平良響の勢い止まず。最多連勝記録タイの8連勝を決める

 FIA-F4選手権の第3大会(第7戦~第9戦)が、11月7〜8日にツインリンクもてぎで開催され、平良響(TGR-DC RSトムススピリットF4)が3戦でポール・トゥ・ウィンを達成。これで昨年、佐藤蓮が打ち立てた“8連勝”に並んだが、最終大会を待たずのチャンピオン決定は、あと一歩のところで果たせずとなった。

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 ツインリンクもてぎが舞台ということもあり、今まで以上に“ストップ・ザ・平良”の期待がかかったのが平木玲次(HELM MOTOR SPORTS F110)。

 平木は茨城県水戸市在住で、兄・平木湧也と新設したチームはサーキットに隣接している。木曜日から金曜日にかけて行われた専有走行では、4セッション中3セッションでトップタイムを記録していた。

 しかし、平木は「みんなが思っているほどデータが豊富なわけでもないし、そんなに走りこんではいませんよ。テストしたのは夏に一度だけですし」と苦笑い。

「でも、持ち込みのセットが決まっていて、すごく乗りやすいので、3連勝するしかないと思っています」とも語った。

 その一方で、残る1セッションでトップタイムを記録し、かつ専有走行で全体のベストタイムを記したのは今季5連勝を決めている平良だった。

 早朝に行われた公式予選は、季節柄、気温・路面温度ともに低いため、後半勝負となるのは明らかだった。そんな予選セッションも残り3分のところで赤旗が出て、そのまま終了となったことで、各車少なからぬ影響が出てしまった。

 だが、そんな状況においてもベストタイム、セカンドタイムともにトップタイムを記していたのが、平良だった。

「いい感じで予選ができました。クルマもバッチリで最高です。一発はギリギリだったんですが、セカンドとアベレージには自信があるので、レースはもう少し楽になるかな、と思っています」と平良は語った。

 一方、平木はベストタイムこそ2番手だったが、セカンドベストは最終コーナーで2台に引っかかってしまい3番手に。

「クルマにポテンシャルはあったのに、自分の位置取りが悪かったので、ちょっと不完全燃焼な予選になってしまいました」と平木は悔やしむ。

 ベストタイムで3番手、セカンドベストタイムで2番手タイムを記録したのは、小川颯太(WARMTECH Skill Speed)。しかし、黄旗区間のオーバーランにより、2レースとも2グリッド降格のペナルティが課せられることとなった。

 これにより平木は2レースともフロントローからのスタートすることとなった。

■第7戦:伊東が好スタートも平良がもてぎ大会初戦を制す

 第7戦決勝では平良、平木ともにスタートで出遅れたなか、3番グリッドスタートの伊東黎明(OTG DL F4 CHALLENGE)がロケットスタートに成功。平木は90度コーナーで再逆転を果たすも、その間に平良にコンマ9秒先行を許してしまう。

 直後にセーフティカーが導入されるも、1周でリスタート。差が詰まった平木は、必死に平良を攻め立てる。

しかし、逆転には一歩決め手を欠き、その後も平良はしっかりとトップを守り抜いて6勝目をマークした。3位には野中誠太(TGR-DC RSトムススピリットF4)が入っている。

 今季6勝目を決めた平良は「引き離すまではいかなかったのはちょっと残念なんですけど、後ろがピッタリ着いている状況でミスせず最後までいられたのが今回の勝因です」とレースを振り返った。

2020FIA-F4選手権 第7戦もてぎ スタート
平良響(TGR-DC RS トムススピリットF4)
2020FIA-F4選手権 第7戦もてぎ 表彰台

■第8戦の表彰台争いは意外な結末に

 第8戦決勝では平良が好スタートを決めたのに対し、平木はまたも出遅れてしまい、小川と澤龍之介(BJ RacingスカラシップJSS)に先行を許してしまう。それでも平良は逃げられず、4台でトップ争いを繰り広げる間に、6周目からセーフティカーが導入される。これで後続が接近したことからコース上は“大渋滞”が発生。混乱の中で平木、澤を抜いていたのが神晴也(ATEAM Buzz Racing F110)だった。

 その後、神と平木の間で激しく3番手争いが繰り広げられる。3位でチェッカーを受けたのは神だったが、レース後、平木に対するブロックが執拗すぎるとの判定により、40秒加算のペナルティが課せられ最終結果は28位となった。これにより、平木が3位を獲得している。

 神、そして平木を振りきっていた平良がトップでチェッカーを受けて今季7勝目を記録。そして小川が初表彰台となる2位に入った。

 もてぎでも好走をみせる平良は「この第8戦ではあまりペースが良くなくて、ずっと小川選手に張りつかれる展開でしたが、苦しい中でもミスなく走り切れたと思います。チャンピオンそのものを意識しないわけではないですが、明日もうひとつ勝つと8連勝になり、昨年の佐藤蓮選手の記録に並ぶことになるので、それを狙って達成できれば、タイトルが近づいてくると思います」と話した。

平良響(TGR-DC RS トムススピリットF4)
平良響(TGR-DC RS トムススピリットF4)を先頭にトップ4台の争いが展開された
平良響(TGR-DC RS トムススピリットF4)

■第9戦:平良、連勝記録タイとなる8連勝を達成

 11月8日に行われた第9戦決勝レースは、第7戦のベストラップ順でグリッドが決定し、平良がポールからスタート。平木、小川、澤という順で続いた。

 スタートではまたもや平木のスタートが決まらず。出遅れたばかりか、その後のペースも上がらず7番手まで後退してしまう。

 第9戦でもセーフティカーが導入され、リスタート後は平良がじわりじわりと逃げていく。中盤以降は小川、澤も単独走行となる一方で、伊東と野中、平木による4番手争いはチェッカーまで激しく繰り広げられた。

 そのままのポジションでチェッカーを受ければ、最終大会を待たず平良のチャンピオンが決定となるが、11周目に野中が4番手に浮上。5番手に平木、6番手に伊東というポジションに替わったことで、チャンピオン獲得は富士大会に持ち越しとなった。

「やっと、まだ(連勝記録に)並んだって感じですね。チャンピオンはあと一歩だったんですが、次でなれたとしてもこの勢いを止めず、目指せ11勝というところです!」と平良。

 小川に続いて3位でゴールの澤は、これが初表彰台。そして、ただひとり平良の王座決定を阻止できる存在の、平木は5位となった。

 「マシンの仕様も変えてもらったり、スタートの仕方も変えてみたりもしたんですが、それがかえって悪い方向に行ってしまいました。次の富士には自分のできる最大限の準備をして、できるだけのことをやりたいと思っています」と平木は語った。

 インディペンデントカップでは佐藤セルゲイビッチ(結婚の学校フィールドモータースポーツ)が2連勝。第9戦では佐藤がアクシデントに巻き込まれたこともあり、クラス10番手からスタートしたIKARI(BJ Racing F110)が逆転優勝を飾っている。

 2020年シーズンのFIA-F4選手権、最終大会となる次戦は11月28~29日、富士スピードウェイにて第10戦〜第12戦が開催される。

2020FIA-F4選手権 第9戦もてぎ
最多連勝記録タイとなる8連勝をマークした平良響(TGR-DC RS トムススピリットF4)

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