リサイクルよりすごい! 完全再利用パッケージで商品を配達する新事業

 プラスチックやガラスの容器などのリサイクルは、もはや常識だ。でも、リサイクルするよりも、容器をそのままの形で再利用すれば、さらに環境に優しくなる。アメリカでそれを実現した画期的なエコ・ビジネスが「Loop」だ。

いつもの商品を完全再利用できる容器に入れてお届け

 2019年9月、ニュージャージー州に拠点を構えるTerraCycle社が開始したLoopというサービスが話題だ。

 Loopは米配送業界最大手のひとつ、UPS社との提携のもと、様々な消費商材ブランドとパートナーシップを組み、それらのブランドの商品を使い捨て容器ではなく、Loop専用の完全再利用容器に入れて配達するサービスだ。食品や洗剤など、日常生活で愛用している商品が、このサービス専用のパッケージに入れられて自宅に届き、使用後はUPSの配達員が再びそのパッケージを回収する。この循環により、容器は何度も繰り返して使うことが出来るため、徹底した環境配慮を実現できるというわけだ。同社のサービスを紹介した映像はこちら。

リサイクルと完全再利用の違いとは

 使い捨て容器の普及は、1950年代以降に主流になった。その当時に比べ、人類は70倍以上の商品を製造し購入していると言われているが、それら商品のほとんどが使い捨てパッケージに収められている。人間が利便性を追求して広めたこの使い捨て文化こそが、現在、地球が抱える深刻な環境問題の主な原因だ。1年間に発生する廃棄物の約4分の1は海に流れると言われており、残りのほとんどは燃やされるか、埋められるかという形でゴミとなる。

 1950年以前の社会では、例えば「牛乳配達」のようなビジネスモデルも機能していた。新鮮な牛乳を入れる瓶は完全再利用で容器はゴミにならなかった――つまり、今よりずっとサステイナブルだったのだ。その時代の状況に限りなく近づけようというのが、このLoopのミッションでもある。

 容器を再利用することは、リサイクルするよりも環境に優しい。理由は、リサイクルをして新しい商品として生まれ変わらせるためには、時間やエネルギー、そして商品化するために補填する必要がある原材料などが必要だが、それを使わずに済むからだ。リサイクルは、あくまで「廃棄物」を原料とした新しい製造だ。しかし容器を回収し、それを再度使うことは製造ではない。

 同社はその配達、容器回収にUPS社と提携しているが、その配送マネージメントにも細心の配慮がなされている。最小限の運送距離を実現する集配ルートをモデル化し、二酸化炭素排出量を抑える工夫をしているという。

 地球の環境を改善していくためには、こうした徹底的な取り組みが求められるものの、その実現は簡単なことではない。そんな中でも、このような徹底さを追求する企業の試みを多くの人たちが支持し始めていることは注目に値するだろう。地球上のほとんどの商材が完全再利用可能な容器に入れられる日が、近い将来に実現するのも夢物語ではないかもしれない。

(2019年9月公開記事)

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