災害時「避難指示」への一本化 効果期待4市町のみ 神奈川県内自治体アンケート

 災害の恐れが高まったときに市町村が適切なタイミングで避難を促せるよう、国が検討している「避難勧告」と「避難指示(緊急)」の一本化などの改善策で、住民らの避難行動が促進される効果を見込む神奈川県内の自治体は4市町にとどまることが、神奈川新聞社のアンケートで分かった。勧告と指示の違いが分かりにくい状態は解消されるとの見方が大勢だが、避難情報の名称変更などが繰り返されることへの疑問も出ている。

 災害対策基本法に基づき市町村が発令する避難関連情報の見直しを巡っては、避難勧告を廃止して避難指示に一本化するほか、昨年新設された災害発生情報を新たな名称や位置付けに変更する方針を政府・中央防災会議の検討部会が示している。昨年10月の台風19号後の住民アンケートで勧告と指示の違いを正確に理解している人が2割未満だった上、市町村からも分かりにくさを指摘する声が上がったことなどが背景だ。

 変更は来年の見通し。法改正を伴う大きな転換となるため、県内全33市町村に今年9~10月、アンケートを行い、複数回答で見直しの受け止めを尋ねた。

 避難指示への一本化などによって、「分かりやすくなり、避難促進の効果が期待できる」としたのは、逗子、南足柄、大磯、開成の4市町。横浜、川崎、相模原など25市町村は「分かりやすくなったが、避難促進の効果は不明」と回答し、横須賀、松田、湯河原の3市町は「分かりやすくなったとはいえない」と受け止めている。

 このほか、茅ケ崎市は避難促進効果に言及せず、「周知や防災計画の修正などを行わなければならず、自治体の負担が大きい」と見直しに伴う事務作業の増大を指摘。「方向性が短期間で変わることにより、情報の受け手である市民の混乱が予想される」と懸念を示した。

 同様の見解は他の自治体からも相次いでいる。「数年程度で運用が変わるようでは住民の理解が進まない」(葉山町)、「変更のスパンが短すぎる。町民に浸透する前に変更となるので混乱を呼ぶ」(開成町)などとされ、避難促進への期待度が低い背景になっているとみられる。

 逗子市は見直しの効果を期待する一方で「状況によっては自宅などにとどまる方が安全な場合も考えられるため、避難指示とそれに伴う適切な避難行動について周知が必要」と課題を指摘。湯河原町は「台風19号の際の避難者は避難勧告より避難指示後の方が多く、2段階の発信は効果的だった」としている。

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