リフォームでキッチンの場所を移動するには?費用相場とメリットデメリット

「キッチンがとにかく使いづらい」という悩みに有効なのが、キッチンリフォームです。既存キッチンの配置を変えたり、新しいキッチンに新調したりするだけで、使い勝手は大きく向上します。今回は、キッチン移動・移設リフォームの基礎知識や費用相場、メリットとデメリットについて紹介します。

そもそもキッチンの移動は可能か?

リフォーム会社によって判断は異なりますが、システムキッチンの場所移動は可能です。ただし、以下のような理由によって工事ができない場合もあります。キッチン移動リフォームを検討する前に、次の点に留意しましょう。

排気ダクト(換気扇)・給排水管は移動を妨げる要因に

住宅の構造上、キッチンの場所移動が難しいケースがあります。なかでも移動を妨げる要因になりやすいのが、排気ダクト(換気扇)や給排水管、そして電気配線です。構造上の理由から配管移設工事が難しい場合、キッチンを移動させられません。

さらに鉄筋コンクリート住宅も注意が必要です。コンクリートの床や天井は加工が難しく、床下げ・床上げする場合のみ、キッチンの移動範囲が制限されます。たとえ配管移設工事を行っても、どの範囲まで動かせるのかは住宅ごとに異なると考えておきましょう。

マンションだとより施工が難しくなる

賃貸マンションの場合、キッチンの場所移動がさらに難しくなります。主な要因は2つ、「管理規約上の問題」と「住宅構造上の問題」です。

管理規約上の問題

マンションリフォームのなかには、管理規約によって行えない工事があります。キッチンの場所移動もそのひとつで、共用部に給排水管などがつながっている賃貸マンションは、管理規約で配管移設工事を認めないケースがあります。これが一戸建てとの大きな違いであり、キッチンの移動リフォームを難しくする要因です。

住宅構造上の問題

1980年代に建てられた賃貸マンションは、床下にゆとりのない構造の物件が多く見られます。キッチンを動かす距離によっては、配管に勾配をつけづらくなり、水の流れが悪化します。このような理由から、キッチンの場所移動は推奨されていません。

比較的リフォーム条件が整いやすいのは、2000年以降に建てられた賃貸マンションです。キッチンリフォームに対応する住宅構造のものが多く、オーナーや管理会社の許可さえ取れば、キッチンを移動できる可能性があります。

キッチンを移動するメリット

キッチンの場所移動には、生活動線が改善されたり、部屋の雰囲気を一新できたりするメリットがあります。ここでは、キッチンの移動リフォームがおすすめな点を、メリットとともに解説します。

動線を広く確保できる

毎日使う場所だからこそ、キッチンは快適かつ使い勝手のいい空間にしたいところです。リフォームでキッチンの場所や向きを変えると、作業動線が改善され、調理の効率化につながります。

キッチンレイアウトの考え方に「ワークトライアングル」というものがあります。ワークトライアングルとは、シンク・コンロ・冷蔵庫の3カ所を結んだ線のことです。3辺の距離が短く、綺麗な正三角形になるほど、作業効率が向上します。

今一度、現状のキッチンスペースを確認してみましょう。ワークトライアングルができていない場合は、キッチンの場所移動や向きを変更するだけで、使い勝手が良くなるかもしれません。

部屋の雰囲気をガラッと変えられる

LDKの場合、キッチンレイアウトは部屋の雰囲気に大きく影響します。たとえば、シンプルな置き型キッチンの場所・向きを変更し、対面キッチンにしてみましょう。正面にバーテーブルを設置すれば、カフェ風のキッチンスペースに生まれ変わります。まるでお店のような、おしゃれ空間で食事が楽しめるようになります。

家族の様子が見えやすくなる

小さなお子さんのいる家庭では、住宅購入時に設置したI型キッチンを対面キッチンに変更するケースが増えています。対面キッチンのメリットは、調理中に子どもの様子を確認できること。さらに作業動線も改善するため、毎日の料理がはかどります。

キッチン移動の費用相場

ここでは、キッチンの移動にともなう費用相場を紹介します。

リフォーム費用の全体像

具体的な移動パターンの前に、まずはリフォーム費用の全体像を見ていきましょう。

  • 既存のキッチンの移動:20万~70万円程度
  • キッチンの新調・移動:100万~200万円程度
  • 別フロアへの移動:90万~250万円程度

もっとも多いのは、既存のキッチンを同じフロア内に移動させるパターンです。給排水管やガスの移設工事も最低限に留まるため、比較的費用を抑えられます。

場所移動とともに、キッチン本体を新調するケースもあります。わかりやすい例が、I型を対面型に変更する場合などです。費用はキッチン本体の金額を含むため、交換するキッチンの種類によっては、200万円近くかかります。

キッチン移動リフォームの費用内訳

「移動だけなのに、思ったより高い」と思うかもしれませんが、キッチンの移動にはさまざまな工事が発生するものです。以下、移動リフォームの費用内訳をご覧ください。

  • 内装工事:5万~25万円程度
  • 給排水管・ガス・排気ダクト・電気などの工事:15万~35万円程度
  • 部屋の養生や廃材処分費:10万~50万円程度

いずれの費用も目安であり、リフォーム業者に見積もりを取ることで正確な金額が算出されます。ただ、移動距離に比例して、リフォーム費用が高額化するのは確かです。希望予算内で施工できるのか、リフォーム業者にあらかじめ確認してください。

既存のキッチンの移動|20万~70万円程度

既存キッチンを流用し、同じフロア内に移動させるパターンがあります。リフォームの費用相場は、20万~70万円が目安です。給排水管・ガス・電気配線などの延長工事のみで済む事例が多く、比較的費用を抑えやすい特徴があります。

キッチンの場所・向きを変えるだけで利便性は向上しますが、キッチンが古くなっている場合は、交換も視野に入れましょう。一般的なシステムキッチンの耐用年数は10~15年ほどです。10年以上使っているキッチンの場合、数年後に交換工事が発生します。長期的に考えると、新調してから移動したほうがお得です。

キッチンを新調し移動|100万~200万円程度

キッチンを新調してから移動する場合、100万~200万円程度の費用がかかります。とくに金額の比重として大きいのが、内装工事と新しいキッチンの本体価格です。

内装工事では、キッチンスペース全体の床や壁の補修を行います。さらにキッチンの新調に合わせ、壁紙・床材・天井材などを変更するケースも少なくありません。その場合、通常の内装工事よりも費用が割高になります。

次に比重が大きいのが、新しいキッチンの本体価格です。システムキッチンにはポピュラーなI型をはじめ、対面型・L型・アイランド型・ペニンシュラ型・セパレート型などの種類があります。交換するキッチンのサイズやグレード、変更するレイアウトによって、費用が大きく変わります。

置き型から対面型にリフォーム|150万~250万円程度

置き型から対面型にリフォームするのは、もっともポピュラーな移動・交換パターンです。費用は150万~250万円程度が目安で、子どもの多い家庭によく選ばれています。置き型とは違い、家事をしながらお子さんの様子を確認できるのがメリットです。一方で、置き型から対面型にリフォームする場合は、給排水管や排気口の移設・延長工事が欠かせません。既存キッチンの壁面や床の補修に合わせ、内装を工夫する必要があります。

対面型キッチンについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

対面キッチンのメリットとデメリット、インテリアレイアウトを紹介

置き型からアイランド型キッチン|200万~300万円程度

置き型をアイランド型キッチンに変更するパターンもあります。アイランド型キッチンは一般的なものとは違って壁に囲われておらず、その自由度の高さがメリットです。おしゃれで高級感があるため、料理好きの方の間で人気のタイプです。

アイランド型キッチンに変更する場合、既存の内装材やシンクなどの撤去工事が発生します。費用相場は200万~300万円程度が目安で、通常のキッチンリフォームよりも割高です。対面型と同じく調理中の視野が広がるため、小さな子どもがいる家庭に最適です。

アイランドキッチンについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

アイランドキッチンとは?メリット・デメリット、よくあるQ&Aを紹介

別フロアへの移動|250万円程度~

キッチンを別フロアに移動させることもできます。実際に多いのが上下階での移動パターン。1階のキッチンを2階に移動させたり、その逆のパターンもあったりします。予算250万程度からリフォーム可能ですが、移動する位置によって費用が変動します。とくに比率が大きいのは、給排水管やガスなどの移設工事です。キッチンを上下階などの別フロアに移動させる場合、追加工事が発生します。

真上や真下への移動なら金額を抑えられる

費用を抑えるコツは、水回りの直線上の1階・2階に移動させることです。水回りの真上、あるいは真下に移動させれば、リフォーム費用を安くできます。上下階への移動は高額化しやすいため、どうすれば費用を抑えられるのかをリフォーム業者と相談しましょう。

キッチン移動のデメリット

ここからは、キッチン移動のリフォームにともなうデメリットと問題点、留意すべきポイントを紹介します。リフォーム後に後悔しないよう、以下の内容を抑えつつ検討しましょう。

工事の価格が高額

工事内容やキッチンのグレード(新調する場合)によりますが、200万~250万円の工事費用がかかります。単にキッチンを移動・移設させるならともかく、内装などを一新するリノベーションを行う場合は、さまざまな追加費用が発生。当然ながら、費用に上乗せされます。キッチンリフォームとしては高額な部類に入るため、相応の予算組みが必要です。

リビングや通路が狭くなる可能性も

キッチンのレイアウトを変えた場合、隣接する部屋・通路が狭くなり、不便に感じることも。たとえば、I型キッチンを対面型やアイランド型に変更した場合、キッチン台がリビング側に飛び出します。部屋が物理的に狭くなるほか、圧迫感も生じるため注意しましょう。

調理の音が響きやすくなる

キッチンを移動させることで、家事などの調理中に発生する音が響きやすくなります。食器を洗う音や、食材を炒める音などが聞こえ、リビングにいる家族から苦情が出ることも少なくありません。キッチンを移動させる際は、生活音が気にならないかどうかも考えてください。

調理スペースが丸見えになることも

キッチンを移動させた結果、リビング側からスペースが丸見えになることもあります。置き型キッチンであれば、近づかなければほとんど見えません。一方、対面キッチンやアイランド型キッチンの場合、食器棚や収納スペースが見えるため、ある程度片付いていないと、だらしない印象になります。

業者の選び方のポイント

高額な工事費用が、キッチン移動・移設リフォームのネックです。一方、業者選びを工夫することで、工事費用を抑えられる可能性があります。ここでは、最適な業者選びのポイントと、工事費用を安くする方法を紹介します。

見積もりは複数の業者から取り寄せる

住宅リフォーム全般にいえますが、複数の業者から相見積もりを取るのが鉄則です。相見積もりを取るメリットは、さまざまな業者の説明を受けつつ、リフォームの相場感がわかること。悪質なリフォーム業者に引っかからないためにも、相場感の把握が必要です。

見積もりを依頼するのは、2~3業者でかまいません。多くても4業者程度から見積もりを取りましょう。「業者数は多いほどいいのでは?」と思うかもしれませんが、数に比例して、現地調査の日程調整が大変になります。2~3業者程度なら、日程調整も簡単なためおすすめです。各業者が提示する工事内容と金額、サービスを確認し、心から納得できる会社を選んでください。

リフォームの見積もりの取り方のコツをもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

リフォーム見積もりで失敗しないためのポイントや注意点を解説

アフターフォローのしっかりした業者を選ぶ

リフォームする際は、アフターフォローや工事保証がしっかりしている業者を選びましょう。とくに重要なのが、工事保証です。

工事保証とは、工事を請け負った業者の過失・事故などにより、依頼主および第三者に対して与えた被害を保証するものです。キッチンの移動・移設リフォームは、比較的高度な施工にあたります。そのため、工事保証つきの業者に依頼すると安心です。

アフターフォローが充実していれば、新調したキッチンの使い方がわからなかったり、簡易的な不具合が生じたりした場合にも、業者に相談できます。アフターフォローや工事保証の有無は、あらかじめ依頼業者へ確認してください。

キッチンの移動リフォームが得意な業者に依頼する

リフォーム会社には、それぞれ得意分野が存在します。キッチンの移動・移設リフォームの場合、キッチンリフォーム全般の施工事例が豊富な業者を選びましょう。このような業者では、キッチン製品を安く仕入れる独自ルートを開拓しています。見積金額も安くなるため、リフォームにかかるトータルコストを抑えられます。

キッチンリフォームの実績が豊富なのは、工務店系のリフォーム会社、専門業者系のリフォーム会社、リフォーム専門店です。各社の公式サイトにアクセスし、料金プランや見積もりつきの施工事例を確認してみましょう。

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