長崎県諫早市老連アンケート 車の依存度高い東部など 地域に応じた移動手段提言へ

 諫早市老人クラブ連合会(市老連、大塚梓会長)は昨年、実施した高齢者が望む移動手段に関するアンケート結果をまとめた。市中心部から離れた東部などで車の依存度が高く、免許返納者や運転免許証を持っていない人の移動手段が限られていることが浮き彫りになった。市老連は、希望者の自宅と既存の公共機関とを結ぶデマンド(予約に応じてコース選定)バス運行など、各地域の実情に合った移動手段を市に提言する方針。
 アンケートは昨年、買い物や通院、行事参加に不便さを感じている会員の声を受け、実態把握と望ましい移動手段を検討する目的で実施。2596人に配り、2002人が回答。免許証を持つ人は1072人(53.5%)、持っていない人は930人(46.5%)。

運転頻度(免許証あり)

 免許証を持つ人の6割超が「毎日、運転する」。免許証を持っていない人の移動手段(複数回答)はバス・タクシーが4割に対し、家族らが運転する車の利用や相乗りが3割超、徒歩が2割だった。
 免許証を持っていない人のうち、居住地の違いで移動手段が異なる点も顕著だった。東部の小長井、高来両地区はバスやタクシー、JRの利用より、家族らの車利用や相乗り、徒歩が多かった。一方、中央や西諫早、多良見(喜々津)各地区はバスやタクシー、徒歩での移動が車を上回る。

移動手段(免許証なし)

 免許証を持つ人の運転頻度は「毎日」が664人(62%)、「週1~6日以上」が347人(32.3%)。タクシーが安価で利用できる制度ができれば、免許証を返納するかどうか尋ねると、「返納しない」が最多の368人(34.3%)だが、「返納する」は203人(19%)、「割引率によって利用」が195人(18.2%)。
 一方、免許証を持っていない人の場合、「割引率によって利用」443人(47.6%)、「利用」129人(13.9%)。免許の有無を問わず、安価なタクシー利用制度に対する潜在的な期待も明らかに。
 市西部の伊木力地区の男性(79)は約10年前、免許証を返納。通院時、路線バスの本数が少なく、JRとタクシーを乗り継ぎ、帰宅せざるを得ないことも。「地区の奥まで巡回して、(病院やスーパーがある)喜々津と行き来する小型バスがあったら助かる。高齢者が多い地域だけに住民の足になるものがほしい」。願いは年々、切実になる。
 市老連は市民全体の利用を想定し、既存の駅やバス停を起点に、各地域を低料金で巡回するデマンドバスの運行を目指す。大塚会長は「高齢者の交通事故防止や運転免許証の返納促進に加え、あらゆる人の社会参加を目指し、市と連携して考えたい」とし、今後も先進事例の調査や会員の意見聴取を続ける。
 市は現在、県営バスと島原鉄道(バスも含む)に年約2億6400万円を補助。市の乗り合いタクシー事業にも年約670万円を支出。市生活安全交通課は「主要な鉄道、路線バスの幹線を維持し、ニーズに合った対策を関係部署と検討したい」と説明する。
 アンケートの集計、分析に協力した長崎ウエスレヤン大の中野伸彦教授は「だれもが安心して暮らせるまちづくりという視点を抜きにしてはいけない。先進事例に学びながら、現在の公共交通機関への公金補助など、費用対効果を再検討する余地がありそうだ」とし、行政と民間が“両輪”となった交通弱者対策の必要性を指摘する。

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