1歳未満は受けない?コロナとの関係は?子どものインフル予防接種の疑問を解消!

最近、インフルエンザの予防接種を慌てて打った方も多いのではないでしょうか。今年の冬は新型コロナウイルス感染症の対策も考えなくてはならず、例年以上にインフルエンザの予防接種の重要性が言われています。

一方、子育て世代が気になるのは、「子どもも打つべき?」という疑問。子どものインフル予防接種は自費診療で、さらに病院によって接種可能年齢が異なるため、打つか打たないかは親の判断に委ねられているのが現状です。有明こどもクリニック豊洲院(東京都江東区)院長の村上典子先生に、子どものインフルエンザ予防接種の疑問点をぶつけました。


「0歳でインフルの予防接種するのは意味がない」はウソ

―そもそも、インフルエンザの予防接種は何歳から受けられるものなのでしょうか。

村上:日本小児学会は生後6か月から接種可能としており、6歳未満がインフルエンザワクチンを接種すると、発病を予防する有効率は50~60%とされています。つまり、6歳未満はワクチンを打てば2人に1人は予防でき、2人に1人はワクチンを打ってもインフルエンザに罹ってしまう。しかし、ワクチンを打っていればもし罹っても重症化や合併症を下げられるとされています。

ただ、そこで難しくなってくるのが、何をもって重症化を見なすのか、どの程度のリスクを下げられるかの割合や線引き。そのため、先生や病院さんでそれぞれの考えや信念が違うので、年齢制限が異なっているのです。

―重症化する例には、どのような症状がありますか?

村上:6歳未満の子どもでリスクが高いのは、たとえばインフルエンザ脳症です。脳全体が腫れたり脳内の圧が上昇したりして、けいれんや意識障害、異常行動といった神経症状が現れることがあります。命の危険や後遺症の恐れもある怖い症状です。

インフルエンザワクチンは、生後6か月を過ぎた0歳児でもインフルエンザ脳症を予防する上で有効である、というのが日本小児科医の共通認識ですね。

―「子どもは1回では効かないため、2回接種が推奨」という話も聞いたことがあります。

村上:13歳未満の小児は、確実に抗体が上がるために2回接種が標準です。1回目の接種から2週間~4週間の間隔を空けて2回目を打ちます。2回目接種の最も有効な時期は1回目接種から3~4週間後ですが、たとえ1回目の接種から4週間以上が経過したとしても、なるべく早く打ってほしいと思います。

遅くとも12月上旬までの接種を!

―そもそも今年はマスクの装着、手洗いやうがいの徹底などがあり、例年以上にインフルエンザは流行しないのではないかという考えもあります。コロナ禍のインフルエンザ流行について注意点はありますか?

村上:おっしゃる通り、今年はインフルエンザが爆発的に流行する可能性は低いという見解を、多くの専門家が持っています。コロナ対策のおかげで、それ以外の感染症もかなり予防できているのが現状です。そのため、「今年は感染症対策も万全にするから、予防接種を打たなくてもインフルエンザに罹るリスクは少ないだろう」というのも一つの考えでしょう。

一方で、ワクチン接種を希望する人は例年以上に多いのも今年の特徴です。多くの病院では、接種を開始した10月初旬時点で、すぐに予約がいっぱいになりました。しかしワクチン自体は今後も供給されます。今、予約が埋まっているとしても今後また予約枠が出るはずまので、その時に接種していただくことをおすすめします。

―まだインフルエンザの予防接種を打っていない人は、遅くともいつまで打てばいいでしょうか。

村上:毎年、インフルエンザが流行るのが12月下旬から3月くらいなので、遅くとも12月上旬までには打ってほしいですね。インフルエンザワクチンは接種後2週間後から効果が有効とされています。そのため、遅くとも流行時期の2週間前までに打っておくのがベストです。

インフルの予防接種を打ったのに、高熱が出たらコロナ?

―大人でも子どもでも、インフルエンザの予防接種を受けて2週間が経過したにも関わらず40℃近い高熱が出たら、やはりコロナを疑ったほうがいいのでしょうか。

村上:高熱が出る病気はインフルエンザやコロナ以外にもたくさんあるため、「40℃の熱が出たからコロナ」と自己判断するのは時期尚早です。

たとえば子どもに多い病気で言えば、アデノウイルス感染症や突発性発疹も高熱が出ます。インフルかコロナという2択ではありません。また、先ほどもお伝えしたように、インフルエンザの予防接種済みでもインフルに罹って高熱が出ることもあります。気になる症状が出ても自己判断せず、かかりつけ医を受診してもらえればと思います。

そもそもインフルエンザもコロナも普通の風邪と似たような症状なので、個人が見分ける方法はなく、専門機関で検査するしかありません。また、子どもがコロナに罹っても重症化する例は極めて少ないことは世界的にも報告されています。検査をしてコロナ陽性が判明した子どもでも、とても元気なケースがたくさんあるようです。

今年の冬はしっかりと感染症対策をしつつ、子どもに風邪やインフルエンザのような症状が出てもパニックになりすぎることなくかかりつけ医を受診してください。

「コロナが怖いから外に出さない」は大きな間違い

―今年は例年以上に、親の冷静な判断や行動が求められているということですね。

村上:小児の病気はほとんどが感染症であり、その原因となるウイルスは乾燥や寒さで蔓延しやすくなるという事実は変わりません。そして何よりも認識していただきたいのは、「子どもは風の子」だということ。

風邪を引くことでそのウイルスに感染し、抗体が体に残って免疫力を高めるという側面もあります。たくさん風邪をひいて体に抗体を蓄積させる子ほど、体は強いのです。「風邪にもインフルエンザにも罹ってほしくないから、子どもを外に出さない」、「誰とも接しない」という育て方はあまり推奨しません。

3密を避ける、手洗いうがい、マスクや消毒といった感染症対策はしつつも、過度な行動制限はさせずに外で元気に遊ばせてください。そうすることで子どもの体は去年より今年、今年より来年と、強く逞しく成長していくということも親は認識していただきたいです。

・村上典子(管理医師 / 医師, 小児科)3人の子どもを持つ小児科医。獨協医科大学医学部卒業後、国立病院機構東京医療センター小児科レジデントやイムス三芳総合病院小児科医員、明理会中央総合病院小児科医員を経て山岡クリニック院長に就任。その後、夫の海外赴任に伴う休職期間を経て2020年3月から有明こどもクリニック豊洲院管理医師となる。

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