横須賀遺族会が県内初の解散へ 旧軍都でも後継者難 組織の間口拡大論も

 県遺族会の加盟組織で、横須賀市内の戦没者遺族でつくる横須賀遺族会が、2015年度限りでの解散を決めたことが分かった。現在56団体が加盟する県遺族会で、市町村単位の組織が解散するのは初めて。戦前から旧海軍が拠点を構え、今も多くの関係者が住む地で戦没者追悼や平和祈念などの活動を続けてきたが、会員の高齢化が進み、組織の維持が困難と判断した。後継者不足が共通の課題となっている遺族会の在り方にも波紋を広げそうだ。

 横須賀遺族会は1946年8月に創立。横須賀市が毎年開催する「市戦争犠牲者を慰め平和を祈念する集い」や8月の「戦没者追悼式」などにも協力してきた。発足当初は戦没者の妻ら3千人ほどの会員を抱えていたが、徐々に減少。現在は約400人で、メンバーの中心も子や孫の世代に移っている。

 80代の男性会員は「残念だが、みんな年をとり、集まるのも難しくなった」。会合の帰りに転んでけがをした人がいたり、母親の脱会を理由に自身も辞めた人もいた。

 次世代の担い手不足が顕著になってきたことから、一昨年から解散の話が出始め、昨年10月の総会で解散を決定した。ただ一部有志による活動の存続や新たな組織立ち上げを探る動きもあり、県遺族会は「先頭に立って動く人がいれば、続くかもしれない」とみている。

 横須賀には戦前、旧海軍が横須賀鎮守府を構え、戦後には浦賀港が外地からの引き揚げ者を受け入れる港となった歴史がある。市の担当者は「かつて軍都だった横須賀の遺族会がなくなるのは、他の地域のそれと意味合いが異なる。遺族の方々の窓口にもなっていた。再編されれば、必要に応じて協力を検討したい」と話している。

 県遺族会に加盟する会員は現在計1万3千人で、平均年齢は75歳。同会関係者は「高齢化がどんどん進み、こうした状況が他の地域で出てくることも考えられる」と指摘する。上部組織の日本遺族会(東京都千代田区)では、全国各地にある遺族会の維持・存続のため、子や孫世代の会員らの組織化や一般人の受け入れも視野に入れ、間口を広げる議論が出ているという。

 ◆県遺族会 1947年3月、地域の遺族が集まり、慰霊祭を行うことなどを目的に前身の県厚生連合会が創設。現在は慰霊に関する事業や遺族に対する福祉事業などを実施。毎年8月15日に県戦没者追悼式を行う。会員計1万3千人で、平均年齢は75歳。

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