「隙なし」ホークスにロッテはどう立ち向かうべき? 名参謀が異例のCSを読み解く

ロッテ・井口資仁監督(左)とソフトバンク・工藤公康監督【写真:荒川祐史】

1位~3位まで全ての立場でCSを経験した森脇浩司氏

2020年のクライマックスシリーズ(CS)は14日からリーグ覇者のソフトバンクが本拠地PayPayドームでロッテを迎え入れ行われる。今季はファーストステージがなくなりファイナルステージの1本勝負となる。コロナ禍により例年とは違うCSを元オリックス監督で、ソフトバンク、巨人、中日でもコーチを務めた野球評論家の森脇浩司氏が分析した。

ソフトバンク、オリックスでは1位~3位まで全ての立場でCSを経験している森脇氏。追う立場、追われる立場では異なった難しさがあるが今年は少し違う状況だ。

「1位がアドバンテージを持つのは同じだが、今回は本来のファイナルとは違い、4戦で決まる超短期決戦。1戦1戦の切り替えは大事になってくるが、やはり勢いをつけたい。例年以上に初戦が鍵になる」

また、昨年まではリーグ優勝チームはCSファーストステージの勝者を待つため期間が空き、試合勘が鈍ることが懸念されていたが「今年に言えばブランクはなく、条件が同じでその点においては試合感覚を心配する必要はない。本来の力が出やすい状況ともいえる」と、レギュラーシーズンでの“力の差”が短期決戦でも出る可能が高いことを指摘した。

シーズン終盤に圧倒的な力を見せ3年ぶりのリーグ優勝を決めたソフトバンク、コロナ禍で主力を欠きながらも西武とのCS争いを制したロッテ。森脇氏は見所満載で目が離せないCSになるという。

ホークスは2年連続で2位となりCSを這い上がった経験も大きい

「先ずロッテは先日の大一番で本来の野球を体現した。継投も一発勝負に相応しい勝負心に満ちたもので起用に応えた選手も更に自信を持ったことだろう。物理的には例年より条件は苦しくなるが唯一ホークスと互角の戦いをしたチームでもあり、波乱要素は十分だ。そして、何より絶好の舞台、安田が何番かが重要ではなく、若い安田、藤原には結果を恐れない超積極的な姿を期待したいし、挑戦者に相応しいロッテの一丸野球が見れるだろう」

一方、ホークスは助っ人陣ではグラシアル、デスパイネ、ムーア、モイネロ……。正遊撃手・今宮が不在の中でも牧原、川瀬、そして周東、栗原ら若手たちが台頭するなど戦力は充実しているだけに「ベンチに控える選手の力量も投打共に隙のない状態でCSに入れる。また、優勝後の戦い方では個人タイトルを考慮しながらもCSを見据え全く隙のない戦いだった。総合すると心身共に受けて立てる準備が整っている」と分析。

また、昨年までは2年連続で2位となりCSを這い上がった経験も大きいという。

「何かが起こるのが短期決戦。劇的に瞬時にチーム力が上がることはないが想定外に機能しないことはある。しかし、ホークスのタレント陣の総崩れは考えにくい。また、ホークスは2年間、逆パターンを演じて来た。追いかける立場で相手を圧倒し隙を与えない。その怖さは十分に感じ取っているだけに2段、3段構えで整っている」

1勝のアドバンテージを持つソフトバンクは初戦を取ればいきなり王手をかける。目に見える有利な条件以外にも森脇氏は選手層の厚さ、試合間隔、追いかける立場を知った2年間の経験値を挙げている。レギュラーシーズンではコロナ禍で主力を欠いたロッテだが、今回は万全の状態でリベンジできる状況も注目すべきポイントになりそうだ。

◇森脇浩司(もりわき・ひろし)

1960年8月6日、兵庫・西脇市出身。現役時代は近鉄、広島、南海でプレー。ダイエー、ソフトバンクでコーチや2軍監督を歴任し、2006年には胃がんの手術を受けた王監督の代行を務めた。オリックスでは2013年から監督を務めるなど、中日、巨人でも名コーチとして多くの選手を育てた。球界でも有数の読書家として知られる。現在は福岡六大学野球の福岡工大の特別コーチを務め、野球以外にも心理カウンセラーの資格を取得。監督通算成績は470試合239勝217敗14分け、勝率.524。(ソフトバンク、オリックス監督代行を含む)(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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