雲仙・普賢岳噴火30年 混乱のあの時 伝える内嶋さん あす朗読会

普賢岳diaryを手に練習する内嶋さん=島原市、森岳公民館

 198年ぶりに雲仙・普賢岳が噴火してから17日で30年を迎えるのを前に、長崎県島原市内で舞台芸術などの創作に取り組む元同市職員の内嶋善之助さん(67)が14日、噴火災害当時の状況や記録、自身の心境を克明に記した日記を基にした朗読会「普賢岳のめざめ」を開く。「一筋縄ではいかない噴火災害を伝えたい。当時を振り返り、混乱したあの時の様子を思い出すきっかけにしてほしい」と訴える。
 「雲仙に登らっさんと?噴煙ば上げよっとに」「え。それ、どういうことですか?」。所属していた商工観光課の業務で、午前8時25分から市内各地を巡るテレビの取材に同行していたあの日。訪れた護国寺(寺町)での住職の言葉と自身のやりとりを、抑揚をつけながら再現していく。
 「この噴火で、対策本部はできるわ、電話はかかってくるわで、市役所中が大騒ぎです!」。噴火を知って電話する場面では、受話器の向こうで慌てながら答える同僚職員を演じる内嶋さん。声色を変えながら臨場感豊かにセリフを読み上げていく。本番が迫り練習にも熱が入る。
 高校生の時から日記をつけていた内嶋さんは、噴煙が上がった1990年11月17日をはじめ、災害当時の様子を書き残していた。噴火の始まりと大火砕流惨事から30年の節目を前に、「記憶の継承のために何かしなければ」との思いから日記を基にした本をつくり、その内容を抜粋した朗読会を開くことを決めた。
 今年6月から本の制作を開始。災害当時の日記の中から印象的な記述を抜き出し、噴火当日から91年9月下旬までを時系列で記載した。読者の理解を助けるための解説も書き加え、9月にサンプル版「普賢岳diary~日記に描かれた噴火災害の風景(カオス)~」30部が完成した。
 これまで戯曲などを手掛けてきた内嶋さんにとって、初めてのノンフィクション作品。噴火当日、同僚とともに向かった雲仙で「この噴煙の上がり方は、かなりなもので今後どうなるか、まったく不明。安心などしておれない」との率直な感想もつづっている。
 このほか、未曾有の災害下で混乱する行政が、政策を決定するまでの過程や議論、逡巡(しゅんじゅん)し苦悩する職員の姿なども包み隠さず文字にしている。「当時を改めて見つめ直す機会にもなった。被災者への理解できなかった上司の言葉など、今なら意味がわかることもある」と語った。
 内嶋さんは「災害はいつどこでも起こり得る。役所の対応や当日の動きなど、将来の災害に役立つならつくったかいがある。事実を記録として次の世代に残せれば」と話す。朗読会は14日午後2時から約1時間、島原市城内1丁目の森岳公民館で上演する。入場無料。問い合わせは内嶋さん(電0957.62.2097)。


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