被爆体験者16人再提訴 県と長崎市に手帳交付求め

横断幕を広げ、長崎地裁へ向かう山内さん(前列左から2人目)ら=長崎市

 国が定める被爆地域の外で長崎原爆に遭ったため被爆者と認められていない「被爆体験者」16人が13日、長崎県と長崎市に改めて被爆者健康手帳と、新たに第1種健康診断受診者証の交付を求め長崎地裁に提訴した。
 16人は被爆者健康手帳の交付を求め昨年、最高裁で敗訴が確定した被爆体験者第2陣原告161人のうち、爆心地から8~11キロの諫早市多良見町や長崎市にいた75~87歳の男女。2017年に最高裁で敗訴が確定した第1陣訴訟の原告のうち28人も同地裁に再提訴し、係争中。
 訴状などによると、放射能で汚染された水や食物を摂取し健康被害が出たなどとして、被爆者援護法が「原爆放射能の影響を受ける事情下にあった」と定める3号被爆者に当たると改めて主張。新たな訴えとして、がんなどの特定疾病があれば被爆者健康手帳に切り替わる第1種健康診断受診者証の地域(爆心地から南北12キロ圏、東西7キロ圏の旧長崎市を中心とする被爆地域の隣接地)は指定に根拠がなく違法としている。
 同地裁前での集会で原告団長、山内武さん(77)は「(国の線引きで)差別された被爆者が生まれた。最後まで戦う」と訴えた。
 被爆者認定を巡っては、広島の「黒い雨」訴訟で7月、広島地裁が原告84人全員を被爆者と認める判決を出した。国は控訴する一方、地元の意向をくんで援護区域拡大も視野に今月16日、有識者検討会の初会合を開く。
 被爆体験者の再提訴後、原告や支援者らは長崎市役所と県庁を訪ね、有識者検討会を長崎の被爆地域の見直しにつなげるため国への働き掛けを要望。市原爆被爆対策部の中川正仁部長は「検討会では長崎も意識してほしいと国に伝えており、これからも働き掛ける」と述べた。県原爆被爆者援護課の山崎敏朗課長も「寄り添って尽力したい」と語った。

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