今年のマスクって「医療費控除」の対象になるの?そろそろ医療費の領収書を集めよう

先日、ある媒体でお金の記事について打ち合わせをしていたときに「そういえば今年のマスク代って、医療費控除の対象になるんですっけ…?」という話が出ました。

さてあなたは、対象になると思いますか? 思いませんか?

そろそろ2020年も年末が近づいてきました。来年の2月からの確定申告に向けて、医療費控除の申告をする人は、そろそろ今年分の医療費のレシートを整理する時期。

今回は、「マスクはどうなの?」ということを含めて、「医療費控除」について確認していきましょう。


医療費がたくさんかかった人は、税金が戻る可能性あり

医療費控除とは、1年間の医療費がたくさんかかった人に、「大変でしたね、払い過ぎた税金を戻しますよ」という制度です。でも誰かがそっと気づいてくれて、あなたに代わって手続きをしてくれる、なんていうことはありません。

自分で1月1日から12月31日までの1年間の医療費を計算して、10万円(または所得金額の5%。どちらか少ない金額)を超える場合に、自分で確定申告をする必要があります。それにより、税金が戻ってくる可能性があります。10万円分は、生計を一緒にする家族分も合算できます。

この「医療費」には、治療費や入院費、薬代はもちろんのこと、電車やバスなど、公共交通機関などの交通費も含まれます。事情があって、電車やバスなどを利用できない場合に限り、タクシー代も対象となります。自家用車で行った場合のガソリン代や駐車料金は対象になりません。

「いやいや、年間に10万円以上医療費はかかっていないよ」という人でも、セルフメディケーション税制といって、ドラッグストアなどで購入できるスイッチOTC医薬品の購入で年間1万2000円を超えた場合は、申告ができます。「年間10万円も医療費はかかっていませんけど、ドラッグストアなどの医薬品で、自分でがんばって治そうとしましたね。払いすぎた税金を戻しますよ」という制度です。こちらの場合は、健康診断やインフルエンザの予防接種など「健康の保持増進および疾病の予防の取り組みをしています」ということがわかる領収書や結果通知書を保存しておく必要があります。(ちなみに、先ほどの通常の医療費控除とは併用できないため、どちらか一つを選ぶことになります)。

詳細は、国税庁や厚生労働省のHPで確認できます。「国税庁 医療費控除」「厚生労働省 医療費控除」などと調べてみてください。

基本の考え方は「治療」か「予防」か

では、今年必須ともいえるマスクですが、医療費控除の「医療費」として当てはまるのでしょうか。

国税庁のHPを見てみると、「新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取り扱い関係」というコーナーがあり、FAQが載っていました。

「私は、新型コロナウイルス感染症を予防するために、マスクを購入しましたが、この購入費用は、確定申告において医療費控除の対象となりますか」というという問いに対しては、「医療費控除の対象となりません」という回答でした。

その理由は、医療費控除の対象となる医療費は、あくまでも「治療」のため。マスクは病気の感染「予防」を目的とするものなので、当てはまらないというわけです。

つまり、「治療」ならOK、「予防」はNGという形で頭に入れておくと、イメージがつくでしょう。

一時期話題になって品薄になったうがい用の消毒液やアルコールの除菌シートももちろん対象外ですし、それ以外にも「健康維持」を目的とするビタミン剤の購入費用も対象外となります。

PCR検査費用は、感染症にかかっている疑いがあるかどうか

また、PCR検査を受けた場合に医療費控除の対象となるのかどうか、という点も気になるところです。

国税庁のHPによると、「新型コロナウイルス感染症にかかっている疑いのある人に対して行うPCR検査費用」は、医療費控除の対象になるとのこと。つまり、「治療」の一環ということで判断されるわけですね。ただし自己負担部分に限るため、公費負担により行われる部分の金額は対象外となります。

また、「単に感染していないことを明らかにする目的で受ける」など、自己判断で受けた場合のPCR検査の費用は、対象外とありました。ただし、陽性であると判明し、引き続き治療を行った場合は、治療に先立って行われる診療と同様に考えられるため、医療費控除の対象となる、とあります。

この点は、健康診断や人間ドッグについての判断とも似ていますね。健康診断により、何も異常がでなかった場合は、あくまでも「予防」として受けたことになりますから、その費用は医療費控除の対象外となります。

でも、もし何か異常が発見されて、再度検診が必要となった場合は、最初の健康診断や人間ドッグにかかった費用は治療の一環ということで、対象となるというわけです

ワクチンの場合は、あくまでも「予防」になりますので、対象外ということがわかります。

年末が近づいてきたので、そろそろ領収書の整理を

確定申告をする際に、まずどれくらい金額がかかっているかを知るために、領収書やレシートを確認することになります。いざ申告書を準備しようと思ったときに、家族の分のレシートがあちらこちらに散らばっていて、見つからなくて慌てるケースもあります。

そろそろ年末が近づいてきましたので、今のうちに一か所にまとめておき、病院ごとにクリップなどでとめておくことをおすすめします。家族がいる方は、家族一人ずつ、まとめておくと申告の際に便利です。交通費がかかった場合は、その分もメモをしておくといいでしょう。

筆者は「2020 医療費控除」というクリアファイルを用意して、医療費の領収書を入れています。家族の分も同様です。ドラッグストアで対象となる薬(風邪薬や胃腸薬など)を買った場合も、レシートをうっかり捨ててしまうことのないように、帰宅したらすぐにそのクリアファイルに入れるようにしています。

医療費控除等の詳細についてわからないことがあれば、国税庁などのHPを確認するか、管轄の税務署や税理士に相談することをおすすめします。

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