高卒は華やかだけど…西武ドラ2浜屋が「社会人からでも遅くない」と語るワケ

西武・浜屋将太【写真:荒川祐史】

昨年ドラフト2位の浜屋は今季3勝をマークした

パ・リーグは9日、レギュラーシーズンが終了した。一時は5位に沈んだが、終盤には2位争いを演じる追い上げを見せた西武。惜しくも「パーソル クライマックス パ」(CS)進出を逃したが、1軍の戦力となって活躍したルーキーもいた。新入団選手を紹介する4回目は、三菱日立パワーシステムズ(現・三菱パワー)からドラフト2位で入団した、浜屋将太投手だ。

小学校2年生の時に兄とともにソフトボールをはじめ、中学校から野球に転向。高校は鹿児島の名門・樟南高に進学し3年時には夏の甲子園に出場した。しかし、先発した2回戦の花咲徳栄高戦では、7回途中5失点でマウンドを降り、チームも敗退。力不足を実感しプロ志望届は提出せず、社会人に進んだ。

「自分には力が無かった。社会人でもっと力をつけて、ドラフト上位を目指そうと思いました。最初は大学進学も考えましたが、社会人は会社に行きながら練習をしている。仕事をしながら野球をやるというのが、かっこいいと思いました。実力のある選手もいっぱいいる。そこで自分を磨きたかった。社会人が魅力的でした」

夏の甲子園で優勝した作新学院高の今井達也投手(現・西武)や花咲徳栄高の高橋昂也投手(現・広島)ら、高校からプロ入りを果たした同級生もいた。社会人になってからもプロの試合をよく見ており、彼らの姿を見て「負けられない。自分もプロの舞台で活躍したい」と強く思うようになった。社会人では、まず身体作りに力を入れた。

「高校生の時は身体がすごく細かったのですが、たくさん食べてウエートトレーニングにも取り組み、体重は20キロ増えました。バッターのレベルの高さも感じました。高校の時に比べてボール球を振ってくれないし、対応が全く違う。1年先にソフトバンクに入団した奥村さん(政稔投手)をはじめ、先輩方から変化球や立ち上がりの入り方、考え方などいろいろ聞きました」

その結果、2年目からは主に先発として活躍し、3年目には都市対抗をはじめ公式戦で好投。そして、ドラフトで西武から2位指名を受け、自身が目標としていた上位指名を掴み取った。

シーズン中に先発転向「社会人からプロ入りしましたが、全く遅くないと思っています」

「社会人の3年間で身体作りからしっかりと取り組むことができました。会社では仕事もして、電話対応やデータをまとめる簡単な作業をしていました。勉強はできなかったんですけど(笑)。『時間を守る』『挨拶をしっかりする』という基本的なところを学びました。社会人からプロ入りしましたが、全く遅くないと思っています」

ドラフトで指名を受けた時は素直にうれしかったと振り返る。そして、一足先にプロ入りを果たした今井とチームメートになった。

「甲子園であとひとつ勝っていれば今井と対戦していたので、そういう話もしました。今井は直接戦ったわけではないですが『すごくいい球を投げるな』と思っていました。実際に近くで見たら真っ直ぐの威力がすごい。直球で押せるところに、自分にはない魅力を感じます。自分もそんな球を投げたいと思います」

ルーキーイヤーを1軍で過ごし、3勝を挙げた。いい経験をさせてもらったが、制球力に苦しんだところが反省点だという。

「真っ直ぐと変化球をしっかり狙ったところに投げられるようにしたいと思います。修正にはブルペンに入ることが一番ですが、遠投や、サードベースとファーストベースの距離で投げるサードスローをやっています。ボールの軌道を意識して投げることが大切だと思います。ひとつでも楽にストライクが取れれば、投球の幅が広がる。オフでも修正を続けて、バッターを楽に打ち取れるようにしたいです」

中継ぎでスタートしたが、シーズン途中から先発に転向。9月16日の本拠地ロッテ戦で初先発初勝利を挙げた。先発にはこだわりがある。

「中で行けと言われたら中で行くしかないですが、一番は先発です。ピッチャーをやっていて、自分でゲームを作れる先発が一番いいなと思います。今後は、ローテーションの1番手で回れる投手になりたいです」

そう力強く話す21歳の左腕は、先発の柱としてチームを牽引する存在となるため、更なる成長を誓った。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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