BMW2シリーズ「グランクーペ」 全幅を抑えたモデルの快適性は?

昨今、全幅の拡大を含めクルマの大型化傾向が目立ちます。その中でコンパクトでありながら実用性にも優れたプレミアム4ドアクーペとして2020年4月から国内販売を開始したのがBMW2シリーズ「グランクーペ」です。


ワイド化する中、全幅を抑えたデザイン

普段乗る乗用車において日本独自の基準として全幅1700mm以下のクルマが5ナンバー、それより上は3ナンバーであることは多くの人が知っていると思います(全長や全高の制限もあります)。

ただ欧州も含め、日本のような規格がないことや昨今重視されているカーデザインの世界では、従来以上に全幅がワイド化される傾向もあります。

BMWにしても主力モデルの3シリーズの旧型が日本の立体駐車場での利便性を向上させるために専用のドアハンドルを装着することで全幅を1800mmに抑えたことは当時、高く評価されました。

その3シリーズも現行型では1825mmに拡大してしまったのも事実。全幅が全てではありませんが、やはり日本の道路事情を考えると1800mmというのはひとつの分岐点、そこに投入されたのがこの2シリーズのグランクーペです。

MINIと共有化する前輪駆動モデル

グランクーペの寸法は全長4540×全幅1800×全高1430mm(今回の試乗車)、4ドアですが立体駐車場への入庫も容易な全高を抑えたクーペフォルムが魅力です。全高を抑えたと言っても実はこの寸法は現行の3シリーズと同じ、パッと見た目も低く感じるのは流麗なフォルムによるものでしょう。

ボディカラーの「スナッパー・ロック・ブルー」は7万9000円のオプションになります

これまでもBMWは8/6/4のシリーズにグランクーペを採用してきましたが、2シリーズにもグランクーペを投入することでシリーズが完成しました。

駆動方式はFF(前輪駆動)が基本です。理由は2シリーズは同じグループのMINIのプラットフォームを採用しています(クーペとカブリオレはFR)。現在の1シリーズも同様ですがFF化により多彩なクルマ作りが可能になり、他のFF車同様ドライブシャフトを持たない構造により特に後席の足元の余裕が生まれます。

ただし今回試乗した最上級の「M235i xDrive グランクーペ」はFFベースの4WDシステムを搭載するので前述したドライブシャフトは搭載されることはお伝えしておきます。

見た目ほど快適性は犠牲になっていない

実際に乗り込む際もそれほど窮屈な感じはしませんし、座った際もシートポジション自体は低いですが、前方視界も十分取れています。

気になる後席ですが、実はこちらのほうが高評価、座ってみると天井のちょうど頭の部分をえぐるように上手く加工されています。身長170cm位までなら十分、足元も見た目以上より広く、前席シート下への足入れ性も優れています。

ホールド性に優れつつ快適性も両立した「Mスポーツシート」を装着します

とはいえ、クーペである以上圧迫感を感じる人もいるでしょう。その際に是非オススメしたいがメーカーオプションの「電動パノラマガラスサンルーフ」です。

日本ではサン(ガラス)ルーフ車は売れない、という風潮もあり、国産車では本当に設定が少ないのですが、輸入車では換気目的だけでなく、後席の人が空を見上げることができるように比較的設定が多いのです。特にこのガラスサンルーフは“パノラマ”の文字の通り、前後方向にも広く快適性の向上にも寄与します。

使える荷室、シートアレンジもマル

今回このクルマに乗って感じたのは後述する走行性能だけでなく、荷室の使い勝手の良さです。ラゲージスペースの容量は430L。これだけ聞いてもピンとこないかもしれませんが、昨今人気のB&CセグメントのSUVと同等です。

深さがあり積載容量も430LとコンパクトSUV並みのラゲージルームです

残念なのはSUVやハッチバック車とは違い、大きくリアゲートが開かないので高さのある荷物を積載する時にはコツが必要になります。

しかし「スルー・ローディング・システム」と呼ばれるシートアレンジ機構はリアシートを40:20:40で分割可倒することができるので、例えば4名乗車で真ん中を倒せば長尺物の積載なども可能にするなど、考え方ひとつで多彩に使いこなすことができます。

追加されたクリーンディーゼル車に注目

今回試乗したモデルはトップグレードでありハイパフォーマンスを発揮するモデルゆえにその走りは単純にスポーティのひと言では片付けられないほど。圧倒的な加速を含めたハンドリング性能を持ちます。

FFベースの4WDですが、少し専門的な話をするとコーナリング時に速度の上昇に伴ってクルマが外側に膨らんでしまう「アンダーステア」がほとんど発生しません。その秘密はこれらをを抑制する独自の「ARB(アクチュエーター・コンティギュアス・ホイールスリップ・リミテーション)」と呼ばれる機構が搭載されているからです。

ただその分、価格も665万円とお高めです。しかし元々このクルマは冒頭に述べたようにFFベースで車両価格は369万円からと非常に買いやすいのも特徴です。

さらにここに新しい選択肢が加わりました。それが8月に追加された2L直4のクリーンディーゼルです。元々静粛性や環境性能も高いこのパワートレーンが搭載されたことで魅力は一気に高まりました。

搭載するハイパフォーマンスエンジンは2L直4ターボで306馬力&45.9kg-mを発生します

現在、BMWは地球環境保護に向けた「Joy+(ジョイプラス)クリーン・エネルギー・プロジェクト」という取り組みを行っているのですが、これに対応させるクリーンディーゼル車やプラグインハイブリッド車など、厳選した車種に対し「Edition Joy+(エディション・ジョイプラス)」のグレードをラインナップしています。

このグレードの最大の特徴は従来からのグレードに対し、ズバリ値下げをすることで買い得感を大幅に高めていることが特徴です。

そしてこの2シリーズグランクーペにも2グレードの218d「Edition Joy+」を設定、標準的な218dのPlayというグレード比較でも「Edition Joy+」は28万円も車両価格が安くなります。従来までのガソリン車も魅力ですが、購入時にはこれをまず最初にチェックすることをオススメします。

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