ソフトバンクの強さはどこにある? CS第2戦で見えた“凡事徹底”の重要性

日本S進出を決めたソフトバンク・工藤公康監督【写真:荒川祐史】

王会長の語った「何をしないといけないか、どうあるべきなのか、を分かっている」

■ソフトバンク 6-4 ロッテ(CS・15日・PayPayドーム)

ソフトバンクが4年連続の日本シリーズ進出を決めた。15日に本拠地PayPayドームで行われたロッテとの「パーソル クライマックスシリーズ パ」第2戦。中村晃外野手の2打席連続2ランで試合をひっくり返し、2連勝でCS突破を決めた。21日からの日本シリーズでは2年続けて巨人と日本一の座をかけて戦うことになる。

ポストシーズン12連勝。改めてソフトバンクの強さが現れたクライマックスシリーズだった。レギュラーシーズンで苦戦を強いられたロッテに2試合続けて逆転勝ち。2試合ともに接戦を制する形となったが、終わってみれば、ソフトバンクは強かったと唸るほかないだろう。

レギュラーシーズンでチーム防御率2点台を叩き出した強力な投手陣と、球界最高の打者である柳田悠岐がグラシアルらを擁する野手陣。もちろん、その選手層の厚さは目を見張る。ただ、ソフトバンクが強いのは、そこだけに理由があるわけではない。

2連勝での突破を決めた試合後、王貞治会長はこう語っていた。「地力の差、力があるなと感じました。選手たちが戦い方を知っている。何をしないといけないか、どうあるべきなのか、を分かっている」。まさにこの言葉にソフトバンクの強さがあると言えるだろう。

この日の試合を振り返ろう。もちろん、ヒーローは2本塁打を放った中村晃だ。だが、これ以外にも見逃せないシーンは多々あった。例えば2回の守備。2死二塁の場面で清田が放った打球は二遊間に飛んだ。この打球を二塁の川島慶三が横っ飛びでキャッチ。すぐさま立ち上がり、三塁に進んだ走者の藤原を牽制した。

川島のダイビングキャッチ、デスパイネの全力疾走、随所に見えた強さの秘訣

中前へと抜けていれば、間違いなく1点だった場面。リードを4点に広げられる大事な点だっただけに、このプレーは大きかった。失点を免れた東浜は続く安田を空振り三振に仕留めて、この回を無失点に切り抜けた。そして、この直後に中村晃の1本目の2ランが飛び出した。

ソフトバンクが逆転した6回にも“らしさ”が詰まっていた。1死からデスパイネが放った打球は三塁への平凡なゴロになった。この打球でデスパイネは一塁へ全力疾走。余裕を持って捌いた安田の送球よりも早く一塁を駆け抜けて内野安打にした。得点には繋がらなかったものの、どの選手も“凡事徹底”を貫くソフトバンクの戦いぶりが現れた。

逆にこのデスパイネの内野安打は、ロッテにとってはあってはいけないミスのはず。平凡なゴロが内野安打になるのだから、痛いと言わざるを得ない。第1戦でも、ロッテは一塁手の井上が何でもない送球を落球して同点にされ、遊撃の藤岡のまずい守備もあった。

当然、どの選手にだってミスはある。この2試合で見ても、ソフトバンク側にもミスは、バントの失敗など多々あった。ただ、勝負の鍵を握るのは、ミスの有無ではなく、やるべきことをやった末のミスなのか、やるべきことを出来ていなかった故のミスなのか。そこなのではないだろうか。

2試合続けて観戦に訪れた孫正義オーナーも「勝ち方を知っているというか、本当に強い、素晴らしいチームになったと思います」と絶賛した戦いぶり。ベテランから若手、助っ人まで全力疾走を怠らないことや、最低限その場その場でやらないといけないことを徹底できる。それこそがソフトバンクが常勝球団たる所以だ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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